インバル&都響のフランク 熱いロマンティスムに酔った!
2022年12月19日、東京文化会館で東京都交響楽団定期演奏会を聴いた。指揮はエリアフ・インバル。曲目は、前半にマルティン・ヘルムヒェンのピアノが加わってベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」、後半に、セザール・フランクの交響曲ニ短調。
ピアノの貴公子として話題のヘルムヒェンなので期待したのだったが、どうも私の好みのピアニストではなかった。私はピアノ曲はあまり聴かないので、よくわからないのだが、どうも指づかいにムラがあるような気がする。「皇帝」の冒頭の華麗なピアノも、なんだか私には指の引っ掛かりがあるように聞こえる。歌心といえるのかもしれないが、私には美しく聞こえない。その後も、妙に性急で余裕を感じない。そのため構築性を感じない。第2楽章のリリシズムも私はあまり響かなかった。
ただオーケストラは、勢いがあり、若々しい。久しぶりのインバルの指揮だが、さすがというか。まったく年齢を感じさせない。
ピアノのアンコールは、シューマンだとのこと。本人が曲名を言ったが、「シューマン」以外は聞き取れなかった。これもとてもロマンティックな演奏で。歌心にあふれているといえるのだが、このような演奏は私には情緒的に揺れているような気がして落ち着かない。
後半のフランクは、打って変わって素晴らしかった。
まさに煮えたぎるようなロマンティスム。色彩的なオーケストラ。色彩的といっても、ラヴェルやドビュッシーのような印象派的な色彩ではなく、ドラクロアのような色彩とでもいうか。情念が渦巻き、音がダイナミックにたたきつけられる。しかし、形は崩れず、しっかりとした構築美が保たれている。フランクの交響曲のあるべき演奏だと思った。熱い音に私は何度か感動に震えた。都響の音色は本当に素晴らしい。金管楽器も色気のある音で、フランクにピッタリ。イングリッシュホルンの響きもとても美しかった。
久しぶりにインバルの指揮を堪能した。素晴らしかった。
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