ムローヴァ&ネトピル&読響 ムローヴァはやはりとてもよかった
2022年12月2日、サントリーホールで読売日本交響楽団定期演奏会を聴いた。指揮はトマーシュ・ネトピル、曲目は前半にヴィクトリア・ムローヴァが加わってショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番、後半にモーツァルトの交響曲第25番とヤナーチェクの狂詩曲「タラス・ブーリバ」。
ネトピルの指揮については,先日の読響定期の「新世界より」はとても良かったのだが、今日は少し疑問を覚えた。モーツァルトの交響曲でとりわけ顕著だが、くっきりと枠組みを作って、フレーズに大きな表情をつけ、対比を明確にしながら音楽を進める。わかりやすいし、メリハリがはっきりして、時に感動を呼ぶが、どうしても音楽が緩慢になり、自然に流れていかない。ショスタコーヴィチでは緊張感が薄れ、モーツァルトでは音楽が停滞し、ヤナーチェクでは、特有のイントネーションのあるこの作曲家特有のわけのわからない音楽の展開を、かみ砕いてわかりやすくしてしまって、せっかくの魅力を半減させてしまっているように思った。
「新世界」では、スケールの大きなとてもいい演奏を聴かせてくれたのだったが、少なくとも私の好きなショスタコーヴィチ、モーツァルト、ヤナーチェクにはならなかった。ただ、ショスタコーヴィチに関しては、ちょっと不満を持ちながらも、スケールが大きくなった分、やはり感動的な部分も多く、私は音の爆発に何度となく感動したことは伝えておく。
ムローヴァに関しては素晴らしいと思った。昔のショスタコーヴィチの協奏曲のCDは何度か聴いたが、それは鮮烈な演奏だった。それを思い出した。ムローヴァもだいぶ丸くなったが、やはり相変わらずのテクニックと相変わらずのストイックでクールな演奏スタイルだと思った。もっと鋭く切り込んでほしいところ、ちょっと鈍くなって、その分、音楽が大きくなったのは指揮者の影響ではないかと思った。カデンツァの部分では、私はその鋭い音色に感動した。
ヴァイオリンのアンコールはバッハの無伴奏パルティータ(「サラバンド」だっけ?あまり自信がない)。ちょっと草書体風の余裕のある演奏だった。これはこれで素晴らしい。
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