鈴木優人&読響の第九 意外とふつうの演奏だったが、大感動!
2022年12月20日、サントリーホールで読売日本交響楽団の第九特別演奏会を聴いた。指揮は鈴木優人、合唱は新国立劇場合唱団(合唱指揮・冨平恭平)。第九の前に、鈴木優人のオルガンによって.バッハの曲(パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV 582だったらしい)が演奏された。
第九は、実は第1楽章の途中まで、ちょっとマンネリというか、意外とふつうの演奏であまりおもしろくないと思って聴いていた。だが、第1楽章の後半から、私はぐいぐいと引き込まれた。古楽的なアプローチだが、かなりオーソドックスな演奏だと思う。弦の重なりが世界を作り出し、そこに管楽器が重なっていく。それがズバリズバリと決まっていく。第3楽章は圧倒的だと思った。まさにメロディが天に昇っていく。そう、何も特別なことはしていないように聞こえる。だが、すべてが理に適っている。すべてが自然に世界を作っていく。そして、壮大で生き生きとして、深い思いに満ちた世界が現出していく。鈴木優人は若くしてもうこんな境地に達したのか!と思った。オーケストラ団員もいかにも楽しそうに弾いているのを感じる。存分に楽器を鳴らし、それが見事にベートーヴェンの世界を作っていく。凄い!
第4楽章の音楽の途中、「歓びの歌」のメロディをオーケストラで大きく奏でているときに、合唱団が登場、独唱者も歌いだす直前に、バラバラに登場する。このような登場の仕方を初めて見た。とてもうまい方法だと思う。こうすれば、途中で拍手が起こって音楽を中断させることもないし、歓喜のオーケストラに乗って合唱団が登場するのは、きわめて音楽の理に適っている。
バスのクリスティアン・イムラーは高貴な声、とてもいい。テノールの櫻田亮も、ちょっと声量不足を感じたが、美しい声で歌いまわしが実に自然。ソプラノのキャロリン・サンプソンとメゾ・ソプラノのオリヴィア・フェアミューレンはともに伸びやかな美声。合唱も文句なし。第4楽章の鳴り物入りのお祭りの雰囲気も実に感動的。第4楽章も本当に素晴らしいと思った。改めて感動した。
第九のコンサートは普段と雰囲気が異なる。若い客、子どもの客もたくさんいる。めったにコンサートに足を運ばないような人も大勢見かける。ふだん、いかに「通好み」のコンサートにばかり通っているかを改めて感じる。だが、このような雰囲気こそが本当のコンサートだと私は思う。めったにコンサートに行かない客も大勢いて、初めて聴いて立ち上がれないような感動を覚える人が何人かいる・・。そうであってほしい。ふだんからこんなコンサートが増えてほしい。きっと今日は、初めてクラシック音楽を聴いて深い感動を覚えた人がたくさんいただろうと思う。
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