インバル&都響の第九 第4楽章に納得できなかった
2022年12月24日、東京芸術劇場で、東京都交響楽団の第九特別演奏会を聴いた。指揮はエリアフ・インバル、合唱は二期会合唱団。
全体的にはとても良い演奏だと思った。力感にあふれており、きわめて構築的。第3楽章までは、ところどころに独特の間の取り方があったり、チェロを中心に大きく鳴らす楽器があったりして、個性的な雰囲気もあったが、全体的にはきわめてオーソドックスな音楽展開だと思った。タメを作って、スケール大きくベートーヴェンの世界を作り上げていく。
第1楽章は壮大、第2楽章は跳躍的、第3楽章は求心的な演奏。見事な演奏だと思った。ただ、第4楽章になり、合唱が加わってから、私はかなり疑問を覚えた。徐々にテンポが上がり、猛烈な速さになってきた。意図的な速度だったのだろうか。むしろ、何かの乱れから、コントロールが効かなくなって速まったのではないかと思った。オーケストラも、その速度についていけず、乱れを生じているように私には思えた。インバルらしからぬ、コントロールの甘さとでもいうか。四人のソリストがフーガ的に歌う部分になって、今度は逆にぐっと遅くなった。それにも私は納得できなかった。
バスの妻屋秀和は私には少し音程が不安定に聞こえた。テノールの村上公太はきれいな歌いまわしだが、少し迫力不足を感じた。ソプラノの隠岐彩夏、メゾソプラノの加納悦子は安定した歌唱。二期会合唱団については、あまりの速さのせいか、じっくり歌うことができずに、必死にがなり立てているように聞こえた。
まあ要するに、第3楽章まで感動して聴いていたのだったが、私は第4楽章に関してはまったく納得できなかった。釈然としないまま帰宅した。
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