「メタモルフォーゼン」に感動した
2023年2月6日、ヤマハホールで伊藤亮太郎と名手たちによる弦楽アンサンブルを聴いた。
演奏は伊藤亮太郎のほか、横溝耕一(ヴァイオリン)、柳瀬省太・大島亮(ビオラ)、横坂源・辻本玲(チェロ)。曲目は、ボロディンの弦楽六重奏曲ニ短調、チャイコフスキーの弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」、そして、リヒャルト・シュトラウスの弦楽六重奏のための「カプリッチョ」と、最後に西山真二(コントラバス)が加わって「メタモルフォーゼン」(弦楽七重奏編)。
ボロディンの曲は初めて聴いた。ロシア的情緒に溢れた曲。ただ、後半の2つの楽章は散逸したということで、第二楽章まででおしまい。中途半端な感じは否めない。チャイコフスキーの「フィレンツェの思い出」は、中身の濃い充実した演奏。一つ一つの楽器がとても雄弁でチャイコフスキーの思いを心いっぱいに伝えている。見事なアンサンブルだと思う。ピタリと音色があって、深い彩りを作り出す。とてもよかった。
後半のリヒャルトシュトラウスの演奏は、前半以上に素晴らしかった。「カプリッツォ」の官能的で、しんみりした音色にも心惹かれたが、「メタモルフォーゼン」はまさに感動的だった。官能的な思い、悲痛な思い、絶望からよみがえろうとする命、そんなものが一つ一つの楽器に込められて、次から次へと音色を変えて行く。変容に変容を重ね、最後に、ベートーヴェンの「エロイカ」の葬送行進曲の断片が聞こえてくる。つまりこの曲全体が葬送行進曲をめぐる変奏であったことが最後に種明かしされるという作りになっている。第二次世界大戦の荒廃を目の当たりにしたシュトラウスの思いが深く突き刺さった。
この曲は、これまで何度か実演を聞いたことがあるが、これほどまでに異様なリアリティを持って迫ってきたのは初めてだった。本当に素晴らしい演奏だった。深く感動した。
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