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アルミンク&新日フィル そっけない「オルガン付き」にやや不満

 2023311日、すみだトリフォニーホールで「すみだ平和祈念音楽祭2023」、クリスティン・アルミンク指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートを聴いた。東京大空襲のあった3月に墨田区で平和を祈念して行われる音楽祭。アルミンクが久しぶりに新日フィルを振るというので、出かけたのだった。

 曲目は、前半にルクーの弦楽のためのアダージョと、萩原麻未のピアノが加わって、ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲、そして、後半にサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」(オルガンは室住素子)。

 前半はとても楽しめた。ルクーの弦楽のためのアダージョは初めて聴いたが、師であるフランクの死を悼んだというだけあって悲痛で哀愁にあふれており、ショーソンの詩曲のようなところもあって、なかなかの名曲。ラヴェルの左手のための協奏曲は、萩原麻未の思い切りのよいピアノが心地よかった。ただオーケストラのアンサンブルについては少々不満を覚えた。私はまったくの素人なので、よくわからないのだが、アンサンブルに何だかスキがあるような気がする。濃密なアンサンブルにならない。詩曲のようとは言ったが、詩曲ほどの濃厚さは感じられなかった。とはいえ、私としてはこの2曲にさほどの濃厚さを求めていたわけではないので、これはこれでまったく不満はなかった。

 ソリストによるアンコールは藤倉大の「Akiko's Diary for piano」だという。おもしろい曲だと思ったが、現代曲に疎い私としては何とも言えない。

 後半のサン=サーンスの交響曲については、私はかなり不満を抱いた。前半以上に濃厚さがない。アルミンクはきっと意識的にそのような演奏にしているのだろう。濃厚なロマン的な雰囲気を爆発させるよりも、もっと知的にアプローチしようとしている。力任せではなく、構築的に音を重ねようとしている。最後の最後にクライマックスを持ってきて、それまでは抑え気味にしようとしている。だが、そうなると、かなりストイックで、そっけない音楽になる。言ってみれば瘦せた音楽になってしまう。オーケストラがもっと精妙であれば、そのようなアプローチも説得力を持つのだろうが、残念ながらアンサンブルの濃密さがやや不足している。びしっと決まらない。最後はさすがに盛り上がったが、そこに至るまでの、この曲独特の心躍るような高揚の連続はなかった。

 アンコールは、フォーレの《ペレアスとメリザンド》の「シシリエンヌ」。もちろん悪くはないのだが、もう少しフランス的な優美さがあると嬉しいのだが、ちょっとそっけない感じ。これも少々不満が残った。

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