クオクマン&金川&東響 金川のコルンゴルトの協奏曲の音色に驚嘆
2023年3月25日、ミューザ川崎シンフォニーホールで東京交響楽団の名曲全集を聴いた。指揮はリオ・クオクマン、曲目は、前半にヴァイオリンの金川真弓が加わって、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲、後半に、リヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」組曲とラヴェルのラ・ヴァルス。
冒頭から、金川真弓のヴァイオリンの音に驚嘆した。まさにコルンゴルトの曲にピッタリの、深い思いのこもった官能的でロマンティックな音! ちょっと妖艶とさえ言えそうな音。この音色で、微細に繊細に、しかもダイナミックに心の奥をくすぐるような音楽を作り出していく。凄い! 金川真弓の名前は聴いていたが、こんな音色を出すヴァイオリニストだったとは!
クオクマンの指揮も、細かいところまで気配りされており、ニュアンス豊かにコルンゴルトの世界を作り上げる。素晴らしい演奏だと思った。クリムトの官能的な絵画のような世界が展開された。クオクマンも初めて聴くが、素晴らしい指揮者だ。
「ばらの騎士」組曲も、しなやかで色彩的な響きだった。すべての楽器に指示を与えているのだろう、ニュアンス豊かに演奏された。しかもダイナミックに盛り上がり、リヒャルト・シュトラウスの豪華絢爛な世界が広がった。舞台はないが、私の頭の中では、マルシャリンやオクタヴィアンやゾフィーやオックス男爵が動いていた。それほどまでに再現力豊かにオペラを作り出してくれた。東響のメンバーもこの複雑な音楽を見事に再現し、濁りのない音を作り出していた。
最後の「ラ・ヴァルス」もとても良かった。音でできた生物がオーケストラの中で生まれ、それがホール全体を動き回るかのよう。東響の響きも美しく、しなやか。ここでも、一つ一つの音が見事に重なり合う。クオクマンはメンバーを厳しくコントロールしているようには見えず、むしろメンバーは自由に演奏しているように見えるが、それぞれしっかりしたニュアンスを伝えている。これも素晴らしかった。
このところ、コンサートに足を運んで、席がそれほど埋まっていないのを感じる。「ホフマン物語」「マニンガーのリサイタル」「N響メンバーの室内楽」はいずれも空席が目立った。今日も、これほど見事な演奏なのに、後ろの方はかなり空いていた。雨にもかかわらず町の人出は驚くほどなのに、クラシック会場は人出が少ないというのは少々寂しい。
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