N響&ヤルヴィのチャイコフスキー 凄い!
2023年4月26日、19時からサントリホールでNHK交響楽団の定期演奏会(Bプログラム)を聴いた。指揮はパーヴォ・ヤルヴィ。曲目は、前半にシベリウスの交響曲 第4番、後半に、ピアノのマリー・アンジュ・グッチが加わって、ラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲と、チャイコフスキーの幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」。
シベリウスの第4番は、実はこの作曲家の交響曲の中で最も苦手な曲だ。おもしろさがよくわからない。第3番までと第5番以降、作風が変化するが、その中間にあって、後期の作風が十分にこなれていない気がする。パーヴォ・ヤルヴィで聴くとおもしろくなるのではないかと期待したが、やはりあまりおもしろくなかった。
ただ、いかにもシベリウスらしい素晴らしい音が聞こえてくる。しばしば音そのものに酔った。ただ、それだけだった。N響(ゲスト・コンサートマスターは篠崎史紀)は切れの良い見事な音を出した。
ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」は、録音も含めて初めて聴いた。とてもおもしろい曲だと思う。パガニーニのカプリース第24番の自由な変奏と言えるだろう。グレゴリオ聖歌の「怒りの日」が繰り返される。確かに、この第24番のメロディそのものは「怒りの日」の変奏と言えそうだ(サン=サーンスの「死の舞踏」と同じように)。マリー・アンジュ・グッチの超越技巧もみごと。バリバリ弾きこなし、しかも小柄な若い女性であるせいか剛腕の音ではない。細身のスマートで繊細な音。とても良かった。
「フランチェスカ・ダ・リミニ」は素晴らしかった。昔々、小学生のころ、同じころにクラシック好きになった友人がこの曲のレコードを持っていた(当時、広く読まれていた雑誌リーダーズダイジェストが販売したレコード集にこの曲が含まれていた)ので、借りてよく聴いたものだ。ヤルヴィの棒さばきはまさに名人技、N響がいかにもチャイコフスキーらしい情念の塊のような激しい音をぶつける。激しい音だが、少しも濁らない。しかも哀愁に満ちた美しいメロディが続く。さすがチャイコフスキー、さすがヤルヴィ、さすがN響。必ずしもチャイコフスキー好きではない(それどころか、曲によっては拒絶反応が起こる)私も素直に感動した。
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