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東京二期会「平和の日」 素晴らしいオペラではないか!

 202348日、オーチャードホールで東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ、リヒャルト・シュトラウス作曲のオペラ「平和の日」を聴いた。

 中学生のころ、つまり57年ほど前に「ばらの騎士」と「サロメ」のレコードに心をかきむしられて以来、私はリヒャルト・シュトラウスのオペラが大好きだ。その後、機会があるごとにオペラ上演や音楽ソフトに接してきた。「平和の日」をみたいとずっと思っていた。シノーポリ指揮のCDを聴いたが、やはりオペラはみないことにはどうにもならない。一生、このオペラに触れる機会はないのではないかとさえ思っていた。東京二期会がこのオペラを取り上げると知って大いに喜んだ。

 が、実を言うと、CDを聴いてあまり惹かれなかったので、今回の上演にそれほど期待していたわけではない。ドイツでもめったに上演されず、日本はこれが初演だという。上演されないのにはそれなりに理由があるはずなので、やはり音楽的に面白くないのだろうと思っていた。

 だが、素晴らしかった。なんと美しい音楽であることか! そして、なんと見事なオーケストレーション! さすがシュトラウス。なぜ、これが上演されないのか、理解に苦しむと思った。

 確かに台本は少々お粗末。シュテファン・ツヴァイクの原案だが、ナチスに追われたために、台本はほとんど素人のようなヨーゼフ・グレーゴルが担当した。言葉も詩的ではないのだろうが、話もわかりにくく、クライマックスの作り方にも難がある。登場人物が生きてこないし、対話が劇性を帯びてこない。確かにオペラとしては欠陥があると言えそうだ。そのため、ややオラトリオ的な雰囲気になってしまっている。だが、それに余りあるほど音楽は素晴らしい。

 このオペラは、ドイツの30年戦争に基づく史劇。降伏して平和を求める市民の願いを無視して、意固地に戦おうとする司令官の敗北を描いている。今、このオペラを上演すると、まるでウクライナに降伏を勧めるメッセージのように見えてしまうが、そう考えるべきではなかろう。これはむしろ、市民の反戦の願いを無視して、権力の手先として大義を貫く司令官(現代と重ね合わせると、もちろんプーチン大統領)への批判としてとらえるべきだろう。

 演奏も見事だった。日本人による演奏も、これほどまでに高レベルになったのかと改めて思った。脇役に至るまで、ほとんどすべての歌手がドイツの一流劇場にまったく引けを取らないと思う。

 その中でもとりわけ、マリア役の中村真紀が素晴らしかった。凄い歌手だと思った。この役にふさわしい強さと健気さを兼ね備え、音程がよくしっかりと声が伸びていく。マルシャリンやアリアドネやアラベラ、ことによるとサロメやクリソテミスも聴いてみたくなるような逸材だ。司令官の清水勇磨もマリアに負けぬ見事な歌声だった。この二人の掛け合いはまさに絶品。心から感動した。

 そのほか、河野鉄平、伊藤達人、石野真帆、北川辰彦、高野二郎、髙田智士、松井永太郎、倉本晋児、石崎秀和、的場正剛、前川健生はすばらしい。大島義彰の合唱指揮による二期会合唱団もよかった。

 指揮は準・メルクル、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。シュトラウス特有の雄弁な音を奏でて、壮麗な世界を作り出した。見事な演奏だったと思う。背後に映像が流され、ちょっとした演技がついた。舞台監督は幸泉浩司。それについても、私は不満はない。

 昨年、ノット指揮、東響の「サロメ」に大いに感動したのだったが、それに匹敵するほどの名演だった。 このオペラの本格的なオペラ上演をみたくなった。

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