« 郷古&加藤&横坂のショスタコーヴィチに興奮 | トップページ | METライブビューイング「ローエングリン」 ただただ感動するばかりの音楽! »

ネマニャはやっぱり凄かった!

 2023421日、かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールで、ネマニャ・ラドゥロヴィチ presents ドゥーブル・サンスを聴いた。

 ドゥーブル・サンスは、ネマニャ・ラドゥロヴィチが結成した弦楽アンサンブルで、ヨーロッパで活動している。2005年のナントでネマニャのヴァイオリンを聴いて驚嘆、わたしはそれ以来、大ファンになって現在に至る。ドゥーブル・サンスの今回の公演は、ちょっとした手違いがあってチケットを買いそびれ、その後、あれこれ雑用が重なったために今回はあきらめようかと思っていたが、知り合いに強く誘われて、直前になってやはり聴くことにした。聴いてよかった。感動した。

 ネマニャの音は以前にもまして研ぎ澄まされてきた。音程がぴたりと合ってゆるぎなく、しかも繊細にして強靭。その音でスケール大きく、天空に切っ先鋭くデモーニッシュと言えるほど大胆に音楽を描いていく。それだけでもぞくぞくするほど素晴らしい。聴く者はまさにこの音の虜になり、魂の乱舞の世界に入り込む気になる。(ネマニャは松葉杖姿で登場。足を痛めている様子。骨折だろうか。痛々しい姿だったが、出てくる音は、まったくそのようなことは感じさせなかった!)

 ところが、アンサンブルもまた、ネマニャの音のように繊細で鋭くて躍動的。まさにネマニャの音を弦楽アンサンブルとして拡大したかのような精度。それでもって「四季」(ただし、春・冬・秋・夏の順だった)を演奏するので、シャープで生き物のように躍動感にあふれており、ちょっと手を触れると、そのものすごい魔力と生命力のために、血が噴き出しそうな気さえする。その中でネマニャが超絶技巧を聴かせる。こんな「四季」を聴いたことがない!

 セドラーの「日本の春」は、以前にも聴いたことがある。セドラーはネマニャの友人の作曲家で、この曲は震災を題材にしたもので、平和で穏やかだった日本の自然が震災の被害を受けながらも立ち直って再び豊かな景色を見せる様子を描く。ただ、日本の情景を描く旋律が、やはり私の耳には日本的というよりも中国的に聞こえて、違和感をぬぐえない。

 後半は、そのセドラーの編曲によるリムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」。弦楽アンサンブルをバックにしたヴァイオリン協奏曲版の「シェヘラザード」といった趣。シェヘラザードのモティーフの音がまずあっというほど美しい。リムスキー=コルサコフはオーケストレーションの名手なので、オリジナルの色彩感は圧倒的なのだが、弦楽アンサンブルでも見事に色彩的なのに驚いた。様々な音色が交錯する。そこにネマニャのあまりに美しいヴァイオリンが切り込んでいく。オリジナル・ヴァージョン以上に雄弁。終曲の躍動感は圧倒的だった。自然に体が揺れ動いて、演奏と一緒になって世界が躍動する。凄い!

 アンコールはトニー・ミシュナ&ジョゼフ・コロンボの「アンディフェランス」と「竹田の子守歌」とモンティの「チェルダーシュ」。「チェルダーシュ」以外は私にはあまりなじみのない曲だったが、ホール全体を巻き込む力を持っている。心の底から感動した。

 実は、先週、命にかかわらない病気のために入院し、金曜日に手術をして日曜日に退院した。その後、人間ドックに引っかかって精密検査を繰り返していた。この1週間、少々憂鬱な時間を過ごしていた。が、切った場所の痛みもほとんどなくなり、精密検査の結果、大病でないことがわかって、今日はネマニャを聴けて気分が晴れた。やっぱりネマニャは凄いとつくづく思った。

|

« 郷古&加藤&横坂のショスタコーヴィチに興奮 | トップページ | METライブビューイング「ローエングリン」 ただただ感動するばかりの音楽! »

音楽」カテゴリの記事

コメント

入院、手術、さらに検査と、大変だったんですね。具合はいかがですか。しばらくブログの更新がなかったので、仕事がお忙しいのかなと思っていました。まさか入院とは思っていませんでした。ともかく演奏会に行けるようになって良かったです。お大事にしてください。

投稿: Eno | 2023年4月22日 (土) 09時12分

Eno様
コメント、ありがとうございます。
ご心配いただき、恐縮です。
ここに病名を書くのをためらわれるほどのちょっとした手術でした。もうすっかり回復しています。しかし、それにしてもトシですね。これから、いろいろなことが起こるであろうこと、覚悟しなければならないと改めて痛感しました。それにつけても、今のうちに、しっかりと音楽を聴いておきたいものです。

投稿: 樋口裕一 | 2023年4月22日 (土) 22時55分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 郷古&加藤&横坂のショスタコーヴィチに興奮 | トップページ | METライブビューイング「ローエングリン」 ただただ感動するばかりの音楽! »