郷古&加藤&横坂のショスタコーヴィチに興奮
2023年4月11日、東京文化会館 小ホールで東京春祭室内楽シリーズ vol.3 郷古廉&加藤洋之のリサイタルを聴いた。
曲目は、前半にブロッホの《バール・シェム》より第2曲「ニーグン」(ヴァイオリンとピアノ版)とショスタコーヴィチのヴァイオリン・ソナタ。後半に、シルヴェストロフのヴァイオリン・ソナタ《追伸》とチェロの横坂源が加わってショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第2番。息をのむような名演だと思った。興奮した。
まず郷古廉のクールでシャープでクリアなヴァイオリンの音にしびれる。音程とリズムがびしっと決まって揺らぐことがない。そのような音で、きわめて知的に、そしてスケール大きく音楽を作っていく。だが、もちろん非人間的な雰囲気はまったくない。ブロッホの音楽ではリリシズムにあふれており、ショスタコーヴィチでは情念にあふれている。しかし、形が崩れない。必死にがむしゃらにかき鳴らしているのではない。奏者の内面にこもるよりはもっとスケールが大きく、宇宙的に広がりを見せるとでもいうか。
加藤洋之のピアノも強烈な音とリリシズムにあふれており、シャープで現代的。二人の音が合わさって、とりわけショスタコーヴィチでは凄まじい世界を繰り広げた。ショスタコーヴィチの音楽はヒステリーの爆発とでも呼べるものだが、この二人が演奏すると、暗くて怨念にあふれて鬱積した狂気のショスタコーヴィチではなく、生きる情念を宇宙に向けて発散する得体のしれないエネルギーを持つショスタコーヴィチになる。
ソナタの第2楽章は、まさに息をのむ演奏。郷古に額から汗が吹き出し、第3楽章では、汗がヴァイオリンを伝って黒服にまで滴り落ちていた。それでもまったく揺らぐことなく、びしっと決まった世界を作り出していく。
シルヴェストロフの曲は初めて聴いた。この曲だけではなく、そもそもこの作曲家の曲は初めてだった。ウクライナ出身の作曲家としてこのところ急に名前を聞くようになったが、どうやら、それだけで済まされる作曲家ではなさそうだ。とてもおもしろかった。ただ、基礎知識なしに聴いたので、何とも言えない。
ショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲も、ソナタに劣らぬほど素晴らしい演奏だった。もうすでにヴァイオリンとピアノで世界を作り上げてしまった中に、突然、登場して、横坂さんはやりにくかったのだろう。初めは少し安定しなかったが、すぐに二人に負けじと強烈な音楽を作り出した。最終楽章のすさまじさは言葉をなくす。ここでも、クリアでスケールの大きな郷古さんのヴァイオリンが前衛として敵地に切り込み、そこにいっそう爆発的なピアノとチェロが追ってくる。興奮した。
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