東京春祭「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 第三幕に興奮した!
2023年4月9日、東京文化会館で東京春音楽祭、ワーグナー・シリーズ「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(演奏会形式)を聴いた。指揮はマレク・ヤノフスキ、オーケストラはライナー・キュッヒルがゲストコンサートマスターを務めるNHK交響楽団。
第一幕、第二幕は、正直言って、舞台なしに音楽だけ聴くのはけっこうしんどいと思った。歌手陣は最高レベルにそろっている。ヤノフスキの指揮も申し分ない。まったくスキがなく、ドラマティックで明快。しっかりした音で確信をもって音楽が進んでいく。ただ、舞台がないと笑いが起こらないし、何をしているのかわからない・・・。
が、第三幕に入ったら、もうそんなレベルではなくなった。圧倒的な音楽だった。とりわけヴァルターの歌に名前を付けた後の五重唱のあたりからは、私は陶然となった。一人一人の歌手の力量も素晴らしいが、五重唱になるとその威力を発揮する。そして、第五場の場面展開後のヨハネ祭の場面の壮大さ、そして、ハンス・ザックスとベックメッサーとヴァルターのやり取りの音の絡みは言葉をなくす凄さ。ヤノフスキの音楽はけっして重くならない。明快でぐいぐいと音楽を推進していく。NHK交響楽団が見事に美しい音を出して、感動を高めていく。
歌手陣では、私は何よりもエファのヨハンニ・フォン・オオストラムの美声に惹かれた。五重唱でもこの人の声がひときわ清澄だった。ハンス・ザックスのエギルス・シリンスは、実は先日、新国立劇場の「ホフマン物語」でフランス語歌唱に問題を感じたのだったが、ドイツ語でワーグナーを歌うと、水を得た魚というか、まさに確信に満ちている。ポークナーのアンドレアス・バウアー・カナバスも威厳に満ちた声でこの役にふさわしい。ベックメッサーをおなじみのアドリアン・エレートが歌ったが、さすがのうまさ。喜劇表現も見事。ヴァルターのデイヴィッド・バット・フィリップはまだ若い歌手だと思う。ちょっと癖のある発声だと思うが、高貴でとても魅力的。ダフィトのダニエル・ベーレも素晴らしい歌いまわし。マグダレーネのカトリン・ヴンドザムもなかなか美声。
日本人歌手たちもしっかり歌った。東京オペラシンガーズも見事。まったく穴がなく、全体がそろっていた。これだけの歌手がそろうと、やはりこのオペラはものすごい説得力を持つ。
もう一つ。舩木篤也氏による字幕も、現代的な言葉を使いながらも格調高くて、私はとても感銘を受けた。素直に音楽の世界に入り込めた。
スタンディングオベーションが巻き起こった。ほぼ全員が立ち上がっていたのではないか。ワーグナーは最高だなあ…とつくづく思う!
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