インキネン&日フィルの第九 とてもいい演奏だった
2023年5月20日、みなとみらいホールで日本フィルハーモニー交響楽団横浜定期演奏会を聴いた。指揮はピエタリ・インキネン、曲目は前半にシベリウスの交響詩「タピオラ」、後半にベートーヴェンの交響曲第9番。日フィル首席指揮者としての最後のコンサート。
インキネンはとても評判がいいのだが、実は私はよい演奏に出会っていない。というか、これまで大喝采されているときも、私はなんだか腑に落ちなかった。最後になって第九が取り上げられるので足を運んだ。
「タピオラ」は音響的にとても充実していた。シベリウスにふさわしい、まさに北欧の自然を思わせるような音。透明な音。そう、まるで森を上を吹く風のよう。とてもいい演奏だと思った。
「第九」については、きわめてオーソドックスな演奏だと思う。オーケストラを煽ったりもしないし、テンポを動かしたりもしない。だが、しっかりとオーケストラをコントロールしている。第1楽章から2楽章前半はちょっと燃焼しきれない様子を感じたが、第2楽章途中からどんどんと盛り上がってきた。第3楽章は素晴らしかった。透明な音が紡ぎだされ、それが絡み合って上昇していく。音の絡み合いが目に見えるよう。そして、第4楽章。バリトン独唱が入る前のオーケストラによるレチタティーヴォの部分の扱いの巧みさに驚いた。知的に構築して、一つ間違うとわざとらしくなるところを、自然に、しかもしっかりと意味がわかるように鳴らしている。
独唱陣はまさに日本最高のメンバーだと思う。バリトンの大西宇宙は張りと深みのある美声。テノールの宮里直樹も、この難しいパッセージを見事な美声で歌いこなす。ソプラノの森谷真理もとてもきれいな強い声、そしてメゾ・ソプラノの池田香織も素晴らしい。ふだんはほかのパートに比べて目立たないはずなのに、この人が歌うとしっかりとその見事な声が届く。合唱は東京音楽大学。
とても良い演奏だった。ただ、そうは言いながら、やはり今回も私はインキネンにはあまり感動しなかった。私は日常生活では実はかなりテンションの低い人間(いつも元気のない態度で物静かにしており、ぼそぼそしゃべり、とぼとぼ歩く)なのだが、こと音楽になるとテンションが上がり、熱くなる。すぐに感動し、熱狂する(外からはあまりそうは見えないかもしれないが)。ところが、インキネンの演奏に関しては、「いい演奏だな」と思いながら、なぜか感激しない。今回もこれまでと同じだった。なぜなんだろう。自分でもよくわからない。何か要因があると思う。
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