ラ・フォル・ジュルネ2023年3日目(5月6日)
ラ・フォル・ジュルネ東京の2023年の最終日の感想を書く。
・アンヌ・ケフェレック (ピアノ) ホールC
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30、31・32番。
昨日の協奏曲第4番と同じような気品にあふれ、しかも強さを持った演奏。研ぎ澄まされているのだが、気品が溢れ出る。ベートーヴェンにしては、ちょっと繊細すぎる気がするが、もちろんこんな演奏も素晴らしい。
ユーモアを交えて曲の紹介するトークが入った。こんなことを言うと罰当たりだが、次のコンサートが迫っている身からすると、トークに時間がかかってしまうと困ってしまう。案の定、31番が終わったところで、次のコンサートに間に合いそうもないので、退場した。残念! なお。途中退場したので、私の聴いたコンサートの数の記録にはこれは入れないことにする。
・堤剛 (チェロ)、ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ (ピアノ) ホールD
「魔笛」の主題による7つの変奏曲とチェロ・ソナタ第3番。
堤さんは確か80歳を超えておられると思う。昔ほどの切れはないのかもしれない。しかし、味のある素晴らしいチェロ! 味わい深く歌う。ヌーブルジェの知的でしっかりしたピアノも素晴らしい。深く心の奥にしみるベートーヴェン!
・ベートーヴェン:七重奏曲 変ホ長調 op.20 ホールC
出演は吉田誠 (クラリネット)、水野信行 (ホルン)、モリス真登 (ファゴット)、オリヴィエ・シャルリエ (ヴァイオリン)、川本嘉子 (ヴィオラ)、マクシム・ケネソン (チェロ)、髙橋洋太 (コントラバス)。
シャルリエのヴァイオリンが全体を引っ張る。繊細で味わい深いヴァイオリン。その音で明るめの音楽を演奏するので、明るい中に深みが増す。くっきりして明快で、味わい深い。重い曲ではないが、ベートーヴェンらしい強さがあってとても面白い。演奏者たちは全員が見事。
・リオ・クオクマン指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団 ホールA
天羽明惠 (ソプラノ)によるシェーナとアリア「ああ、不実なる人よ」とアブデル・ラーマン・エル=バシャ (ピアノ)によるピアノ協奏曲第5番「皇帝」。
「ああ、不実なる人よ」は、実は小学生のころからの私の好きな曲の一つだ。カラヤン指揮、フィルハーモニア管弦楽団の交響曲第4番のレコードを買ったら、そのあとにシュヴァルツコップの歌うこの曲が入っていた。今でも、実演であっても第4番の交響曲を聴き終えると、頭の中でこの曲の冒頭が鳴る。
天羽さんは表現力豊か。リオ・クオクマンも身振りの大きい音楽でしっかりと彩る。とても良い演奏だった。ただ、ソプラノ独唱を聴くには、このホールは大きすぎる。もう少し狭いホールで聴きたかった!
「皇帝」も素晴らしかった。エル=バシャのピアノはまさに理想。大げさなところは全くなく真正面から知的に音楽を作っていくが、そうであるがゆえに音楽に生命と力がみなぎっている。すごい! ただ、これももう少し狭いホールのほうが理想だ。
・オリヴィエ・シャルリエ(ヴァイオリン)、アンヌ・ケフェレック(ピアノ) ホールD7
ヴァイオリン・ソナタ第1番・第5番。
素晴らしい演奏だった。なんという深い味わい! 濃厚といってよいだろう。フランスの大家が二人で演奏すると、こんなに深い味わいになるのか! 香りにあふれている。大人の感情が渦巻き、大人の色気があり、深い人生がある。シャルリエのヴァイオリンは男の色気のある繊細な音色。その音で激しく勢いよく弾く。ケフェレックのピアノも香り立つ音で、これまた勢いよく生き生きと歌い上げる。生きる力にあふれているが、若々しくはない。やはり深い年齢を感じる。素晴らしい演奏。感動した。
・交響曲第九番 ホールA
リオ・クオクマン指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、東響コーラス、種谷典子 (ソプラノ)、鳥谷尚子 (アルト)、宮里直樹 (テノール)、河野鉄平 (バリトン)。
第1楽章はなかなかいいと思った。クオクマンは身振りの大きな指揮でメリハリをつけ、スケール大きく音楽を作っていく。だが、第2楽章、あまりに速く、楽器がついていけないところもあった。しばしば大混乱。第3楽章は少し落ち着いたが、天国的な雰囲気は出ないままだった。そして、第4楽章でまたものすごい速さ。独唱も合唱もあまりのスピードについていけなくて、なんだかやけっぱちで歌っているような印象を受けた。これでは歌いにくいだろうに。それはそれで祝詞的な雰囲気にはなったが、やはりこれほど混乱しては音楽にならない。クオクマンはとてもよい指揮者だと思うのだが、なぜこんな速いテンポにしたのだろう。納得できない。ともあれ、この曲で今年のラ・フォル・ジュルネ東京は終わった。
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