ラ・フォル・ジュルネ2023年2日目(5月5日)
ラ・フォル・ジュルネ東京2023年の二日目、5つのコンサートを聴いた。簡単な感想を記す。
・天羽明惠ソプラノ ホールD7
ベートーヴェンの歌曲はふだんあまり演奏されない。これを機会に天羽さんの歌を聴けるのは嬉しい。私はずっと昔、二期会公演のアリアドネを聴いて以来の天羽さんのファンなので、とても楽しみにしていた。
曲目は、「五月の歌」「思い出(WoO136)、「口づけ」「ミニヨン」「憧れ」「希望に寄す」「アデライーデ」など。
まさに円熟の味。ピアノの村上寿昭もぴたりと寄り添っている。演奏もさることながら、軽妙でしかもためになる語りが入ってとても楽しい。調性の特徴についての話、それを示すベートーヴェンが20代の頃のピアノ曲「プレリュード」の演奏もおもしろかった。
天羽さんの歌は、伝えたいものをたくさん持って、それを音楽に託しているのがとてもよくわかる。深い感情が歌詞に込められている。
・ベートーヴェン ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 op.97 「大公」 ホールC
もはや若手というのは失礼かもしれない。現在の演奏家のトップを走る萩原麻未 (ピアノ)、神尾真由子 (ヴァイオリン)、横坂源 (チェロ)の演奏。
とても繊細にそして優雅に始まった。女性的ともいえるような優雅さ。もっと壮大でスケールの大きな演奏を期待していたが、確かに大公というニックネームにとらわれなければ、こんな演奏も十分にあり得る。ピアノはしなやかで繊細。ヴァイオリンは時々激しい音を交えながら、ぴたりとつけていく。チェロは、知的にそれを支える。3人の息がぴったり合っている。第二楽章の親密な音の重なり合いは素晴らしかった。第4楽章では十分に盛り上がった。
・「ロマンス」第1番とピアノ協奏曲第4番 ホールA
齋藤友香理の指揮による東京交響楽団。初めに毛利文香のヴァイオリンで、ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第1番。久しぶりにこの曲を聴いた。この若い二人の女性の演奏を私はこれまで聴いたことがなかったと思う。毛利は、丁寧に、そして細かいニュアンスをつけて、他愛なくなりがちなこの曲を見事に演奏。素晴らしいと思った。指揮の齋藤も的確に音楽を作っていると思った。
アンヌ・ケフェレックのピアノが加わってのピアノ協奏曲第4番はもっと素晴らしかった。
ケフェレックは75歳。見た目では、小柄でもあって弱々しい感じがする。電車に乗っていたら、席を譲りたくなるほど(とはいえ、私とそんなに年齢は変わらないが!)。だが、ピアノから出てくる音は全く高齢を感じさせない。気品にあふれ、ニュアンス豊かで生き生きとしており、しかも時に強靭。一つ一つの音にかぐわしさがあり、しかも流麗で凛としている。これはこの人にしか出せない音ではないかと思った。まさにラ・フォル・ジュルネの女王!
第1楽章のカデンツァは聞く者の心をひきつけ、第2楽章の抒情も凛としており、涙が出てきた。第3楽章も喜悦にあふれている。すごいピアニストだと思った。指揮の齋藤もしっかりとサポートしてソリストの味わいを豊かなものにしていた。
・トリオ・アーノルド 弦楽三重奏曲全曲演奏第2回 ホールD7
昨日の第1回に続いて、2回目。曲目は弦楽三重奏曲第1番と第4番。第1番はディヴェルティメント風の軽い音楽。だが、初々しいメロディにあふれてとてもいい。ただ繰り返しが多くて、いつまでも終わりにならないので、ちょっと退屈した。が、なかなか楽しい曲。そして、トリオ・アーノルドの演奏がとてもいい。ヴァイオリンの音がくっきりとして、アンサンブルも美しい。切れがいいが、シャープ過ぎない。音に輝きがあるので。潤いのようなものも感じる。
第4番はハ短調の曲。これはまさに名曲。私はCDで何度か聴いてとても惹かれていたが、今回の演奏は期待以上だった。ハ短調のベートーヴェン曲にふさわしく、激しく切り込み、運命的な響きを作り出す。ぐいぐいと聞く者の心に入り込んでくる。推進力が素晴らしく、三人の音が見事に重なり合う。感動した。
・毛利文香 (ヴァイオリン)津田裕也 (ピアノ)ヴァイオリン・ソナタ第8番、第6番 ホールD7
私は今日はじめて毛利さんのヴァイオリンを聴いて「ロマンス」に感銘を受けたので、大いに期待していたが、期待通り。思い切りのよいヴァイオリンだと思う。ズバッと音が出てくる。率直に音楽を進めていく。だが、そこにしっかりとニュアンスがあるので、音楽が素直に進んでいく。勢いがあり、生命力がある。まったく音楽が停滞しない。津田のピアノもニュアンス豊かで素晴らしい。毛利さんのヴァイオリンの率直な音をニュアンス豊かに支えている。二人の音楽がぴたりと合っている。素晴らしい演奏だった。アンコールは、クライスラーのベートーヴェンの主題によるロンディーノ。これもよかった。
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