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METライブビューイング「ばらの騎士」 シュトラウスの世界を堪能した!

 METライブビューイング「ばらの騎士」(2023415日公演)をみた。指揮はシモーネ・ヤング、演出はロバート・カーセン。

 まず歌手陣が充実している。元帥夫人はワーグナーやベートーヴェンの主要な役で大活躍のリーゼ・ダーヴィドセン。ドラマティックな声の持ち主なので、元帥夫人の繊細な表現に合っているのかどうか少し心配だったが、まったくの杞憂だった。この役にふさわしいしなやかで気品のある美しい声で、複雑な表情を見事に歌った。シュヴァルツコップのような技巧を凝らした歌ではなく、もっと率直な歌いっぷりだが、むしろ現代ではこのような表現のほうが説得力があるだろう。

 オクタヴィアンのサマンサ・ハンキーも素晴らしい。今回、この歌手を初めて知ったが、初々しくて溌剌としていて、まさにボーイッシュ。少年に見える!声もしっかり出ていた。ゾフィーのエリン・モーリーはこれまでも何度か聴いてきたが、ますます表現力が増したようだ。METの育成プログラム出身だったと思うが、すごい歌手に育ったものだ。高音がとても美しく、うっとりするほど。第3幕の三重唱は溶け合った声に感動した。

 オックス男爵のギュンター・グロイスベックは、今やこの役を得意としているようだ。エネルギッシュで若々しいオックスで、下品でありながら愛嬌があってとてもいい。ブライアン・マリガンは実に人間臭いファーニナルを作り出して、これもいい。

 ヤングの指揮は、繊細でしなやかで、しかも音の重なりが鮮明。私個人の趣味としてはもう少しダイナミックな部分と官能性の両方があってほしかったが、それはないものねだりというべきだろう。

 カーセンの演出では、時代をシュトラウスがこのオペラを作曲した第一次世界大戦前に変えており、オックス男爵やオクタヴィアンは軍服を着ている。そして、ファーニナルは成り上がりの武器商人という設定になっている。幕切れの部分、台本では黙役の小姓がゾフィーの残したハンカチを取りに舞台上に戻るが、今回の演出では、まだオクタヴィアンとゾフィーがベッドの上で愛を交わしているとき、小姓が現れ、手(手に何を持っていたのかは確認できなかった)を舞台背景に向けると、向こうにある戦車などが崩壊する。つまりは、愛の力が武器を壊すというメッセージだろう。同時に、シュトラウスが男女の愛のオペラを作ることによって戦争に向かおうとする社会をなし崩しにしようとしたという解釈を示したともいえるだろう。

 ただ、第二幕が娼館という設定になっていたのが、私には納得できなかった。娼館だとすれば現実問題として、元帥夫人が立ち入らないだろう。そこに何か象徴的意味があるのかと思ったが、私にはわからなかった。

 とはいえ、さすがMET。最高の歌手陣、最高の舞台。シュトラウスの世界を堪能した。

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