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ラ・フォル・ジュルネ2023 初日(5月4日)感想

 2023年のラ・フォル・ジュルネ東京が始まった。4年ぶりの開催。私は2005年の初回開催時、たまたま拙著がベストセラーになっており、クラシック音楽初心者向けの本も書いたという経緯があってアンバサダーの一人に任命されて、このイベントを日本に定着させるためのあれこれ活動に参加した。ラ・フォル・ジュルネ関連の書物も何冊か書いた。そのためもあって、ラ・フォル・ジュルネ発祥の地であるナントを二度訪れ、東京だけでなく、ラ・フォル・ジュルネが開かれている金沢、びわ湖、鳥栖にも出向いて、これまで有料講演だけで508のコンサートを聴いてきた。

 新型コロナウイルスで中止された3年間は実に残念だった。そして、久しぶりの開催。しかも、初回と同じで、私の大好きなベートーヴェンが特集!

 ただ、今年は、様々な事情があって、あまりたくさんのコンサートを聴くことができない。今日5月4日は2つの公演だけを聴いた。簡単に感想を書く。

 

・トリオ・アーノルドによるベートーヴェンの弦楽三重奏曲全曲演奏の第1回。ホール・D7

 トリオ・アーノルドは2018年に結成された若手演奏家(たぶん、日本とフランスと韓国を出自とする3人の男性)によるグループ。曲目は、弦楽三重奏曲第2番、弦楽三重奏のためのセレナーデ ニ長調 op.8、弦楽三重奏曲第3番。

 明快でくっきりしたとてもよい演奏。ベートーヴェン初期のモーツァルトやハイドンを思わせるような曲想をみごとに浮かび上がらせている。ういういしくてしなやか。ベートーヴェンらしいスケールの大きさはない。だが、なんと美しい旋律。ベートーヴェンにこんなにチャーミングで初々しい一面があったことに改めて驚く。

 ベートーヴェンの弦楽三重奏曲はめったに演奏されない。弦楽四重奏曲を作曲する前の若いころに作曲しただけなので、やむを得ないが、それにしても、これらの若いころの魅力あふれる曲が知られないのは惜しい。トリオ・アーノルドはそれを見事に聴かせてくれた。

 

 

・ベートーヴェン 三重協奏曲など Aホール

 初めに、谷口知聡のピアノ、松本宗利音の指揮による東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏で、ベートーヴェンのピアノと管弦楽のためのロンド 変ロ長調 WoO6(ピアノ協奏曲第2番の第3楽章として構想されたもの)、そのあと、ピアノ・ヴァイオリン・チェロのための三重協奏曲。

 ロンドについては、すっきりまとまっていたとはいえ、何事もなくあっさりと終ってしまったという印象だった。ピアノについてもオーケストラについても同じように思った。もう少し自己主張してほしいと思った。

 三重協奏曲についても同じような印象を持った。この曲については、私はずっと「駄作」だと思っていたのだが、2011年の鳥栖のラ・フォル・ジュルネで、ミシェル・ダルベルト、テディ・パパヴラミ、タチアナ・ヴァシリエヴァがソリストを務め、ゲオルグ・チチナゼがシンフォニア・ヴァルソヴィアを指揮をした演奏を聴いて驚嘆。なかなかの名曲だと思ったのだった。今回は、辻彩奈 (ヴァイオリン)、伊東裕 (チェロ)、レミ・ジュニエ (ピアノ)という若いソリストたち。指揮も松本宗利音も30歳になるかならないかの若さ。鳥栖で聴いた以上の名演を期待したのだった。

 しかし、「やはりこの曲は駄作かも」と思えるような演奏だった。ソリストたちはとても良かった。辻も伊藤もジュリエもクリアで切れのある音。だが、まとまりがない。オーケストラの音はあまりに無表情。平板で盛り上がらず、弛緩ぎみ。指揮の松本はきっとものすごい才能の持ち主なのだと思うが、オケのメンバーだけでなく、ソリストたちをコントロールしていくのは荷が重すぎたのではないかと思った。結局、みんながばらばらに演奏し、指揮者はそれをまとめきれずに中途半端で終わった感じ。結局、盛り上がらず、何を言いたいのかわからずだった。この曲は、そのような意味で演奏の難しい曲なのだと改めて痛感。

 

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