エリアス弦楽四重奏団ベートーヴェンサイクル最終日
2023年6月14日、サントリーホールブルーローズでサントリー・チェンバーミュージック・ガーデン、エリアス弦楽四重奏団ベートーヴェンサイクル最終日を聴いた。曲目は前半にベートーヴェンの弦楽四重奏曲第4番と第10番「ハープ」、後半に、「大フーガ」付きの第13番。
前半の演奏は圧倒的だった。ハ短調の第6番は、ベートーヴェンのハ短調らしい宿命的な強い音に始まり、聴く者をぐいぐいと深い世界に導いていく。完璧に息の合った演奏で、例によって第一ヴァイオリンの音色が強靭で繊細。第2楽章は、スタッカートを強調して繊細な世界を作り出す。第3・4楽章は、深い世界を通って高揚していく。素晴らしかった。
第10番も完成度の高いこの曲を完璧に演奏。メリハリをつけ、多少誇張した表現をするが、それぞれのフレーズのニュアンスもきわめて自然で、まったくわざとらしさがない。すべての楽器が驚くほどに一体化している。テクニックも見事。もちろん、近年流行しているような爽快に弾きまくる演奏ではなく、音楽を楽しみ、感情を豊かに表出する。とりわけ繊細に切り込んでいく第一ヴァイオリンの音に心をつかまれる。
第13番も素晴らしかった。大フーガ以外はこの曲は2日目に続いて二度目の演奏。私はそんなに耳が良くないので、2日目との違いなどよく分からなかった。今回は同じような演奏だと思った。
そして終楽章の大フーガ。とても良い演奏だったが、実をいうと、私の好みではなかった。前回、16番を聴いた時と同じ印象を抱いた。
私は大フーガを、第16番と同じように、ベートーヴェンの最後の到達点だと思っている。そこは人間の感情などを超越した世界だ。それまでの曲にはベートーヴェンの様々な感情が表現されていた。喜怒哀楽という言葉では表せないような深い感情であれ、ともあれ人間の感情が描かれていた。だが、16番や大フーガは感情ではないと思う。もっと突き抜けた世界、「我」から抜け出す運動とでもいうようなものを感じる。大フーガは、もっと端的に言えば、感情から抜け出す魂の物語なのだと思う。ところが、エリアス弦楽四重奏団の演奏は、やはり人間の感情の表現のように聞こえる。どこがどのように人間の感情なのかといわれると困るが、そう聞こえるとしか言いようがない。実に複雑な感情を深く鋭く描いているとは思うのだが、やはり感情の表出に聞こえる。
きわめて私の主観的印象だが、それがこの弦楽四重奏団の解釈なのだと思う。それはそれで素晴らしかったが、16番と大フーガだけは、もっと別の演奏のほうが好みだった。
総括としては、エリアス弦楽四重奏団」の演奏に私は大いに感動した。16番と大フーガ以外は最高レベルの演奏だと思った。幸せな6日間だった。
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