クロンベルク・アカデミー日本ツアーⅠ 若々しいドヴォルジャークはとても良かった
2023年6月15日、サントリーホールブルーローズでサントリー・チェンバーミュージック・ガーデン、クロンベルク・アカデミー日本ツアーⅠを聴いた。クロンベルク・アカデミーとは、ドイツの音楽教育機関で、優秀な講師の元、今や世界で大活躍している若手演奏家たちが学んできたという。今回は、その講師たちと教え子たちの公演ということだ。
曲目は前半に毛利文香(ヴァイオリン)、サラ・フェランデス(ヴィオラ)、アレクサンダー・ヴァレンベルク(チェロ)の演奏でドホナーニのセレナード ハ長調 作品10と、ミハエラ・マルティン、大江馨(ヴァイオリン)、サラ・フェランデス、ハヤン・パク(ヴィオラ)、フランス・ヘルメルソン、宮田大(チェロ)の演奏でシェーンベルク「浄められた夜」、後半に大江馨、毛利文香、ハヤン・パク、ユリアス・アザル(ピアノ)の演奏でドヴォルジャークのピアノ五重奏曲第2番。なお、ミハエラ・マルティンとフランス・ヘルメルソンはクロンベルク・アカデミーの講師だとのこと。
ドホナーニの曲については、私は曲そのものについてまったく無知であり、残念ながらあまりおもしろいと思わなかった。クリストフ・フォン・ドホナーニは大好きな指揮者だったので、その祖父である作曲家に興味を持って、一時期、CDを何枚か聴いてみたが、どれにも関心を持てなかった。このセレナードも、よくわからないまま終わってしまった。
「浄められた夜」は、私はあまり良い演奏とは思わなかった。講師である第一ヴァイオリンのミハエラ・マルティンのかなり力のこもった表現にほかの人がついていっていないように感じた。そのために、全体が一つのまとまりを作っていない。昨日まで、あまりにまとまりの良いエリアス弦楽四重奏団を聴いていたせいもあるのかもしれないが、私にはあまりにばらばらに聞こえた。とりわけシェーンベルクのこの曲は弦の音が溶け合って渦を巻いていかなければ官能も絶望も喜びも伝わらないと思う。なんだかちぐはぐ。もしかしたら、ベテランの講師陣の音楽観と、教え子たちの若々しい感性がかみ合っていないのではないかと思った。
しかも、最後の5分くらい(5分は大袈裟かもしれないが、少なくとも3分以上続いたと思う)客席の後ろのほうで、ピピッピピッと目覚まし時計のような電子音が鳴った。曲が終わってからも鳴り続けていた。私はずっと気になって仕方がなかった。あってはならないことだが、もちろん人間にはミスがある。音源に責任のある人はすぐに気づいて止めるべきだと思う。もし本人が気づいていなかったら、近くの人が注意して止めさせるべきだと思う。
後半のドヴォルザークのピアノ五重奏曲については、若々しい溌剌とした演奏だった。普段よく聴くこの曲の演奏はもっとしっとりして、いかにもドヴォルザークらしく郷愁にあふれたものだが、今回の演奏はそのような面は薄く、むしろ若き情熱を感じさせた。曲の冒頭に美しいメロディを奏でるチェロの宮田大のスケールの大きな強い演奏が全体を引っ張ったという面もあるだろうし、ピアノの若々しくも躍動感あるユルアス・アザルの主導によるという面もありのかもしれない。第1・2楽章の美しいメロディも決して弱々しくなく芯が強く、第3・4楽章はまるで生の賛歌のように高揚した。なるほどこのようなアプローチもある。とてもよかった。
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