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新国立劇場「サロメ」 指揮に不満を覚えたが、ラーモアとトマソンはとても良かった

 202364日、新国立劇場で「サロメ」をみた。

 指揮はコンスタンティン・トリンクス、演出はアウグスト・エファーディング。この演出を見るのは、5回目か6回目だと思う。2016年には、ニールンドがサロメ、ヨカナーンがグリムスレイ、シュヴァルツがヘロディアス、フランツがヘロデを歌うという最強の布陣の素晴らしい上演だったので、今回も期待していたが、私はかなりがっかりした。

 まず、トリンクスの指揮に不満を覚えた。私にはかなり弛緩しているように聞こえる。緊張感がないし、倒錯的な官能性もない。このオペラを「ばらの騎士」の延長のようにとらえ、豊饒で贅沢な絵巻物のように演奏しているのかもしれない。だが、それではこの残虐で倒錯的なこの作品の魅力がまったく出ない。ヘロデとヘロディアスが登場する前のあの素晴らしいオーケストラの部分もヴェールの踊りの部分も、これは私の大好きなオペラなのに、少しも私は反応しなかった。

 しかも、もっと私の気に障ったのは、音が異様に大きいことだ。緊迫感のない音がただ大きな音で響くから、歌手たちの声をかき消してしまう。東フィルはかなり健闘していると思うが、それが裏目に出ているのを感じる。

 歌手陣については、圧倒的に素晴らしかったのはジェニファー・ラーモア。さすがラーモア! 大歌手がこの役のために日本に来てくれたことに感謝! ヨハナーンのトマス・トマソンもさすがの歌唱。しかし、声が客席まで届いたのはこの二人だけだった。

 サロメのアレックス・ペンダは、ともかく声が聞こえてこない。オーケストラにかき消されて、ヴィブラートばかりが聞こえてくる。とりわけ高音が聞こえなかった。ヘロデのイアン・ストーレイは、この役のわりには高貴な声。それはいいのだが、やはり声が届かない。

 ナラボートの鈴木准、小姓の加納悦子、ユダヤ人の与儀巧、青地英幸、加茂下稔、糸賀修平、畠山茂らも健闘しているのだが、やはりオーケストラに負けていた。

 この分厚いオーケストラを超えて客席にまで声を届かせるのは大変だったと思う。歌手のみなさんに同情したくなる。先日の「リゴレット」は素晴らしかった。おそらく、指揮者の力量の違いによるものだろう。もっとベニーニ・クラスの指揮者がタクトを振ってくれることを願う。

 ところで、このごろ思うのだが、開演前にオーケストラが音鳴らしをしていることが多い。アメリカ式らしい。私はそれを好まない。うるさくて仕方がない。音慣らしは客の前でやるべきものではなかろうと思う。指揮者の登場の後に音が聞こえてくるほうが、神聖な気持ちで音楽に接することができてうれしい。そうではないにしても、せめて、場内のアナウンスの際は、音鳴らしをやめるべきではないか。これまで何度か経験があるが、今日も、オーケストラが大きな音を鳴らしている最中に、「演奏中の写真撮影などをご遠慮ください。・・・携帯電話をお切りください。・・・耐震設備を有しています・・・」のアナウンスがなされた。もちろん、まったくアナウンスは聞こえない。これはこれで大事な情報なので、きちんと観客に聞いてもらうべきだと思うのだが。

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