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葵トリオのスケールの大きなベートーヴェンのハ短調

 202369日、サントリーホールブルーローズでサントリー・チェンバーミュージック・ガーデン、葵トリオのコンサートを聴いた。曲目は、前半にベートーヴェンのピアノ三重奏曲第3番とドビュッシーのピアノ三重奏曲ト長調、後半にラフマニノフの「悲しみの三重奏曲」第2番(1907年版)。

 実は、私は曲目を誤解していた。どういうわけか、別の曲だとばかり思いこんでいた。実際の曲目を知ってびっくり! 

 葵トリオはスケールの大きな演奏。ヴァイオリンの小川響子の振幅の大きな躍動感あふれるヴァイオリンが魅力だ。作品1―3というベートーヴェンの初期の初々しさの残る、しかしハ短調のベートーヴェンらしさがすでに表れているこの曲を、まさにこの曲にふさわしく演奏。秋元孝介のピアノがぐんぐんと音楽を推進し、伊東裕のチェロがロマンティックにそれを支える。見事な三人の連係プレイだと思う。ただ、もう少し、ためらいがちで鬱々とした部分もあってよいような気がした。あまりにスケールが大きく、あまりに外向きな曲になっている。しかし、聴いていてとても納得する演奏ではある。

 ドビュッシーのこの曲は、おそらく私は初めて聴いた。どんな曲なのか頭に思い浮かばなかったが、ドビュッシーの曲だからきっとCDか実演かで聴いたことがあるだろうと思っていたが、まったく聞き覚えがなかった。が、それにしても、葵トリオが演奏すると、大きく振幅し、スケールが大きくなり、ドラマティックになる。なるほど、このようなドビュッシーもあっていいだろう。もしかすると、ドビュッシーの内面はこうだったのかもしれないと思った。

 ラフマニノフの「悲しみの三重奏曲」第2番は、チャイコフスキーの死を悼む曲だそうで、まさに悲しみの表現。ラフマニノフらしく深い感情を激しい音楽にして表現する。とてつもなく難しいパートをこの三人は見事に演奏。きっと名演奏なのだろうと思う。ただ、やはり私はどうもラフマニノフは苦手だ。マーラーほど大嫌いというのではないが、あまりに激しい情緒の垂れ流しにどうにもついていけない。抑制しつつ情緒を吐露すのならいいが、ラフマニノフはこれ見よがしに情緒を爆発させるので、耐えがたくなる。しかも長い!私としては少々うんざりした。

 が、演奏としては見事。葵トリオの技量に驚嘆した。

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