« 台湾映画「少年」 人物とモノのしみじみとした存在感 | トップページ | マロオケのベートーヴェン 第5番の素晴らしい高揚 »

2本の「ラ・ペリコール」映像

 7月中に自宅の建て替えのために一時的に仮住まいに引っ越しをし、その後片付けなどをしているうちに、7月下旬に新型コロナウイルスに感染。その後も倦怠感が残り(ただ、怠惰な私は常に倦怠感を覚えているので、病気のせいなのか元来のものなのか判断がつかない)、しばらくの間ごろごろしていたが、やっと通常の日常生活を取り戻した。

2本の「ラ・ペリコール」映像(1本はBDを購入、もう1本はNHKBSの放映)をみたので感想を書く。

 

オッフェンバック オペレッタ「ラ・ペリコール」(1874年、改訂版)2022年5月17,19日 パリ、オペラ・コミック座

「ラ・ペリコール」は私の好きなオペレッタの一つだ。テレサ・ベルガンサの歌ったディスクはとても楽しかった。それを上回る楽しいディスクは現れないかと思っていたら、やっと実現した。

 とても楽しい舞台だ。まず、指揮のジュリアン・ルロワがとてもいい。若い指揮者で、素人の私にはこの人にどのような将来性があるのかなどはまったくわからないが、フレージングがしなやかで、オペレッタ特有のはしゃぎっぷりと余裕の両方が見事に両立している気がする。ヴァレリー・ルソールの演出もとても気が利いている。ユーモラスで漫画的。みんなが酔っ払った場面など、まさに酔っ払いの空間感覚を再現していておもしろい。

 歌手陣も充実。ペリコールのステファニー・ドゥストラック(何度か来日しているようだ。私も聴いて感心した覚えがある)もチャーミングで明瞭な声と演技。ピキーヨのフィリップ・タルボも人の好い芸人を見事に歌う。副王のタシス・クリストヤニスも芸達者で楽しい。すべての歌手がしっかりとした声と演技。申し分ない。いかにもペルーを舞台にしたらしい色彩的な舞台で、時代的な服装がおもしろい。

 オペラ・コミックはオッフェンバックのオペレッタのこのレベルの上演をしばしば行っているのだろうか。本当に上質の上演。いかにもオペレッタらしい歌手陣とオーケストラ。このようなオッフェンバックのオペレッタをもっともっと観たい!

 

オッフェンバック オペレッタ「ラ・ペリコール」 2022年11月23・24日 シャンゼリゼ劇場 (NHK/BSプレミアムにて放送)

 シャンゼリゼ劇場で上演された「ラ・ペリコール」。NHKで放送された。2022年というから、上にあげたオペラ・コミックと同じ年だ。たまたまた重なったのだろうか。めったに上演されないこのオペレッタが同じパリで同じ年に上演されたとすると、オッフェンバック・リバイバルが訪れているのだろうか。そうだとすると嬉しい。

 こちらの管弦楽はレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル、指揮はマルク・ミンコフスキ、演出・衣装はロラン・ペリーという、現在、このオペレッタ上演に考えられる最高の布陣。そして、事実、最高度の充実している。躍動感あるオーケストラ、センスと躍動感にあふれる演出。ペリコールのマリナ・ヴィオティ、ピキーヨのスタニスラス・ド・バルベラクともに立体感のあるスケールの大きな歌、副王のロラン・ナウリはさすがの演技と歌唱。いうことなし。ベートーヴェンやシュトラウスを歌っても通用するような見事な歌唱。

 舞台にペルーらしさはまったくなく、登場人物の服装も現代のもので、ペリコールとピキーヨはともに、タトゥーだらけのパンクファッションの若者。コンクリートだらけの場末や無機質な牢獄で場面が展開される。むしろ、そのような無機質な場で躍動的な音楽が生み出され、楽しい舞台になっていくことを狙っているようだ。

 とても見事な上演だが、個人的にはいかにもオペレッタ風のオペラ・コミックの上演のほうが好みだ。

|

« 台湾映画「少年」 人物とモノのしみじみとした存在感 | トップページ | マロオケのベートーヴェン 第5番の素晴らしい高揚 »

「音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 台湾映画「少年」 人物とモノのしみじみとした存在感 | トップページ | マロオケのベートーヴェン 第5番の素晴らしい高揚 »