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映画「崖上のスパイ」「悲情城市」「赤い闇」「オネーギンの恋文」

 酷暑が続いている。今日は、午前中は雨が降って少し落ち着いているが、また午後になるとひどい暑さになるだろう。

 妻の新盆、一周忌を終え、一息ついている。この一、二年、まったく想定していなかったことが次々起こって、あたふたするばかりだったが、そろそろ自分の時間を大事にして生きていくことを心掛けたい。

 ソフトを購入して数本の映画を見たので、簡単な感想を記す。

 

「崖上のスパイ」 チャン・イーモウ監督 2021

 チャン・イーモウ監督の映画。昨年だったか、日本で公開されたが、ぐずぐずしているうちに終わってしまった。DVDを見つけて購入。

 日本が傀儡国家・満州を建国した時代。ソ連で訓練を受けた男女4人が満州国に潜入して、「ウートラ作戦」を行おうとする。だが、味方の裏切りによって満州の特務警察がその動きを察知して、4人を泳がせながら「ウートラ作戦」を探ろうとする。ところが、特務警察の中にもスパイがいて、四人を手助けする。そのようなサスペンス。映像美は見事。ハラハラドキドキ。

 ただ、残念ながら、私には登場人物の顔の区別がつかず、実に参った。敵味方入り乱れるのに、顔の識別ができないとどうにもならない。しかも、けがをしたり拷問を受けたりして、顔がはれていたりするし、満州の冬なので厚着をして顔を覆っている。これでは、いっそうわからなくなる!

 途中で初めから見直した。最後まで見たあとも、また飛ばし飛ばし見直してみた。だが、それでもまだ識別できず! 男たちもわからないし、よく見ないと女性スパイと特務警察の女性の区別もつかない! 私はとりわけ識別能力が劣るという自覚があるのだが、ネットのレビューを見たら、多くの人が私と同じように顔の識別ができなかったことを書いている。

 もう少し顔の識別という点に考慮して作ってほしかったと思うのは、私自身の能力欠如を十分に認識していないわがままな願いだろうか。

 

「悲情城市」 1989年  侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督

 先日みた「少年」があまりに鮮烈だったので、ホウ・シャオシェンの代表作といわれる台湾映画「悲情城市」のDVDを購入。

 映画は玉音放送で始まる。台湾の基隆に住む林家の四兄弟を通して、まさに終戦になって日本が台湾から離れる日から国民党政府の樹立までの4年間を描く。中心をなすのは、四男の文清(トニー・レオン)。日本という支配者が去ると、その後、もっと横暴な大陸人がやって来て、台湾は翻弄される。その様子が描かれる。長男は上海マフィアに殺され、次男は戦争で行方不明のまま、三男は上海マフィアとの闘いの中で精神を病み、四男・文清は台湾独立運動に巻き込まれて官憲に連行されたまま消息不明になる。

 四男・文清役の香港スターであるトニー・レオンが台湾語を話せないためにやむなく聾唖の役にしたというが、それが成功している。聾唖者が中心にいるために、映像に不思議な空間ができて、リアルな悲劇が神話のようなポエジーを生み出す。まさしく叙事詩になる。しかも、その聾唖者である文清は写真館を営んでいる。流動するリアルな事件を普遍的な歴史として永遠化させるのが写真の役割だ。こうして、知的で善良な聾唖者を通して、日本の敗北、中国からやってきた大陸人の横暴、台湾人の反抗が一つの叙事詩となって浮かび上がる。

 この映画で観光地として有名になったといわれる九份の光景もこの映画の魅力の一つだろう。映像が美しく、詩情があふれ出る。

 ただ、この映画でも私は林家の人々や上海マフィアの人々、文清のもとを訪れる知識人たちの顔の識別ができず、途中でDVDを見直さなければならなかった。私の能力不足なのだろうが、何とかならないものかと思ってしまう。私以外の人は、これをきちんと識別できるのだろうか?

 

「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」 アグニエシュカ・ホランド監督 2019

 ヒトラーの取材経験があり、ロイド・ジョージに顧問をしていたジャーナリスト、ガレス・ジョーンズ(ジェームス・ノートン)は、スターリンの取材をしようとモスクワに出かける。ところが、モスクワで会うつもりだった仲間のジャーナリストが殺されている。疑問を持ったジョーンズは、スターリンの宣伝する革命の成功を疑い、単身ウクライナに赴き、そこで餓死する人々を目撃し、飢餓の中を彷徨う。生還した後、周囲の無理解にもかかわらず、スターリンの欺瞞とソ連の実情を訴え続ける。

 リアルに描かれており、とても説得力がある。権力者の農業指導が誤っているために不作になり、しかも、収穫された穀物はモスクワに送られて、現地には残されない。ウクライナはソ連中枢の植民地のようにされている。そのような状況が描かれる。現在のロシアとウクライナの戦争の原点がこのような点にあることもよく理解できる。

 よくできた映画だが、まあ予想通りといった感じで、特に感動はしなかった。

 

「オネーギンの恋文」1999年 マーサ・ファインズ監督

 チャイコフスキーのオペラ「エフゲニ・オネーギン」が大好きなので、ひょいとこの映画DVDを見つけて購入。細かいところでは、プーシキンの原作(ただ、家の建て替えのため、蔵書はレンタルルームに入れて仮住まいで暮らしているので、すぐには確かめられない)とも、オペラとも少し話が違うが、基本的には大差ない。最も大きな違いは、オネーギンとレンスキーの決闘が雪の中の郊外ではなく、湖畔で行われることだろうか。

 ただ、オネーギン(レイフ・ファインズ。監督はレイフ・ファインズの妹だとのこと)の造形が不十分で、映画をみるだけでは、なぜタチアナ(リヴ・タイラー)がオネーギンに惹かれて恋文を書くのか、なゼオネーギンはタチアナの恋文に冷淡だったのか、なぜオネーギンはレンスキーをからかったのか、なぜ最後にタチアナに夢中になるのかが納得できない。何の説明もなしに音楽だけで描かれるオペラのほうが説得力があると思った。もう少し、初々しくもひねたニヒリストであるオネーギン、純情なレンスキー、夢見る少女だったのが大人として脱却するタチアナを描いてほしいと思った。

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