ネマニャのチャイコンに感動!
2023年9月3日、東京文化会館で、東京都交響楽団定期演奏会を聴いた。指揮はサッシャ・ゲッツェル。曲目は最初にリャードフの「ポロネーズ ハ長調」、次にネマニャ・ラドゥロヴィチのヴァイオリンが加わってチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。後半にチャイコフスキーの交響曲第5番。
リャードフのポロネーズはどうということのない曲だと思った。「プーシキンの思い出に」という副題がついているが、この曲のどこがプーシキンなのかもよくわからなかった。
ネマニャのヴァイオリンは相変わらず素晴らしかった。研ぎ澄まされた、音程のよい切っ先の鋭い音。しかも、高音はこの上なく透明で精妙。広々とした大宇宙に切っ先鋭い刀で躍動する絵を描いていくかのよう。その音で激しく躍動する音楽を作り出していく。聴く者はヴァイオリンの音がまるで自分自身のような気になって魂を揺り動かされる。私はこの人のヴァイオリンを聴くと感動し、涙が出てくる。音楽そのもののすばらしさを味わわせてくれる。
ネマニャはコミュニケーションをとりながら音楽を進めていくが、第1楽章は、ネマニャのヴァイオリンについていけずにオケのメンバーが困っている様子が見てとれた。なんとかゲッツェルがオケをコントロールして事なきを得た感じ。第2楽章あたりから落ち着いてきて、第3楽章は息がぴったり合ってきた。間違いなくチャイコフスキーではあるが、かなり現代的なチャイコフスキーだと思う。昔ながらも感傷的なチャイコフスキーではなく、より鋭利で知的でダイナミックなチャイコフスキー。その中にリリシズムがある。心から感動した。
ヴァイオリンのアンコールはパガニーニの24のカプリースの最後の曲(だと思う)。これまたものすごい! いったいこの人の指は何本あるの?と音を聴くだけでなく、目で見ても思ってしまうようなとてつもないテクニック。それが完璧な音程で快速に、そしてダイナミックに演奏されるので、ただただ圧倒され、音楽に身を任せるしかない。
後半の交響曲第5番は、実はあまりおもしろいと思わなかった。きっと従来のチャイコフスキー像を改めようとしているのだと思う。感傷的で激情的なチャイコフスキーではなく、もっと知的で純音楽的なチャイコフスキー。ただ、やはりそうするとあまりおもしろくなくなる。平板になり、爆発がなくなり、叙情が淡白になる。最終楽章では都響がしっかりした美しい音を明確に鳴らして、それはそれでしっかりした音楽を作り出したが、私は物足りなさを感じた。
今日の収穫はあくまでもネマニャ! 改めてすごいヴァイオリニストだと思った。
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