ビシュコフ凄い!
2023年10月29日、サントリーホールでチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演を聴いた。指揮はセミヨン・ビシュコフ。曲目は、すべてドヴォルザークの曲で、前半に序曲「オセロ」とパブロ・フェランデスが加わってチェロ協奏曲、後半に交響曲第8番。凄い演奏だった。
まずビシュコフの指揮ぶりに圧倒された。これはもう名人芸だと思った。何か変わったことをしているわけではない。テンポを揺らさないし、何かの楽器を強調しているわけでもない。煽っていくわけでもない。むしろテンポはまったく揺らぎがない。だから、きわめてオーソドックスな演奏だと思う。ただ、すべての音が明確に聞こえ、音の立ち上がりの切れがよく、音の重なりが絶妙に聞こえる。そして、見事に高揚していく。おそらく緻密に組み立てられ、一分の隙もないほどに計算通りの演奏なのだと思う。だが、聴いているとかなり即興的というのか、チェコ・フィルのメンバーが自主的に演奏しているように見える。それにしても、メンバーがとても楽しそうに演奏している。魔法だと思った!
チェロ協奏曲については、ソロのフェランデスも素晴らしかった。若々しくてスケールの大きな演奏。ふくよかな音で、しかもロマンティック。オーケストラとのコミュニケーションもとてもよくて、ぴたりとはまった感じ。
チェロのアンコールは「鳥の歌」。スペインのチェリストということで、もしかしてカザルスへのオマージュなのか。ふくよかに、そしてしみじみと演奏。他愛のない曲だが、感動的だった。
交響曲第8番はまさにビシュコフの独壇場。昔のギュンター・ヴァントのこの上なく緻密に組み立てられた演奏を思い出した。本当に完璧! 曖昧なところがまったくなく、切れがよくびしっと音が決まる。すべての音に表情があり、楽想が重なって展開していく。ドヴォルザークらしい哀愁を帯びたメロディも本当にニュアンスにあふれている。第4楽章の高揚は見事。
アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第5番。これも素晴らしい。躍動感も見事だが、それ以上に、これほど躍動しながらも、テンポがぴたりと決まっているので、気品にあふれている。音の処理が本当に美しい。興奮した。
ビシュコフは大巨匠だと思った。ラトルもティーレマンもペトレンコもすごいと思ったが、ビシュコフはもっとすごいではないか!いつの間にこんなすごい指揮者になっていたんだ!と驚嘆した。
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コメント
樋口さん。 こんにちは。
矢張りご覧になっ!いましたか。チェコ・フィルハーモニック+セミヨン・ビシュコフ!
僕も10月29日のプログラムは、チェロ協奏曲と交響曲第8番が組まれていたので観に行きたいと思いましたが、安いチケットも手に入らず分不相応でした。
この日は地元・稲城フィルのコンサートがあったり、競馬の天皇賞があったりしてひとりで複数の身体を持ちたいと思える日でしたね。
樋口さんのblogをみて僕もサントリーホールに行きたかったとの思いを強くしました。
今月は、ウィーン・フィルハーモニーやベルリン・フィルハーモニーも来日公演を開くので、もしも良かったらご感想等お聞かせください。
投稿: kum | 2023年11月 4日 (土) 09時55分
kum様
コメント、ありがとうございます。
ビシュコフの凄みを味わうことができて、私は幸せでした。ぜひ、機会がありましたら、これからお聴きになってください。
なお、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルは私は今回は聴く予定がありません。チケット売り出しのころ、事情があって、そのころ行けそうもないと思っていったん諦めたのでした。その後、チケットが売れ残っているようでしたので心が動いたのですが、いったんした決心を翻すにはチケット代があまりに高いので、そのままになっています。
投稿: 樋口裕一 | 2023年11月 6日 (月) 14時49分