オペラ映像「ドン・パスクァーレ」「宝を探す男」「ファウスト」
急ぎの原稿があったり、娘の出産(二人目の孫が先週生まれた。妻がいないので、状況によっては手伝いに行かなければならないのでは、と思っていたが、その必要もなかった)があったりで、それなりに忙しかったが、昨日からのんびりしている。世界では、ウクライナだけでなく、パレスチナが大変なことになっており、世を嘆きたい気になっている。私はもちろんパレスチナ人に同情的なのだが、それにしても、こうなるとわかっていてなぜハマスは攻撃したんだろう! 今更私が嘆いたところで仕方がないのだが。
そんな中、オペラ映像を何本か見たので、簡単な感想を記す。
ドニゼッティ「ドン・パスクァーレ」2019年10月24,30日 ロンドン、ロイヤル・オペラ・ハウス
文句なしに楽しい。やはりドン・パスクァーレ役のブリン・ターフェルとノリーナ役のオルガ・ペレチャッコが最高度に充実。ターフェルは演技もうまいし、声の余裕が格別。ペレチェツコは容姿を含めて、この役にふさわしい。マラテスタ役のマルクス・ウェルバもしっかり歌っていてとてもいい。エルネストのイオアン・ホテアは丁寧に歌っているが、線の細さはいかんともしがたい。エヴェリーノ・ピドの指揮もとてもいい。音楽的にはとても満足。
ダミアーノ・ミキエレットの演出。舞台を現代に移しているのはいいとして、黙役の老召使を登場させたり、バックに映像を映し出すことにどのような意味があるのか、私には理解できなかった。
シュレーカー 「宝を探す男」2022年5月10,14日 ベルリン・ドイツ・オペラ
名前は知っていたが、シュレーカーという作曲家のオペラを初めてみた。シュトラウスと同時代の作曲家とあって、シュトラウスのオペラからシュトラウスらしさを引いた感じの音楽とでもいうか。コルンゴルトにも似ている。でも、なかなかいい。ちょっとインパクト不足だが、官能的で耽美的。しかも、甘ったるすぎない。まったく退屈することなく音楽を聴くことができる。台本もなかなかおもしろい。
歌手陣はそろっている。タイトルロールであるエリスのダニエル・ヨハンソンは高貴でしっかりした美声。とてもいい。エルスのエリーザベト・ストリッドも素晴らしい。道化のミヒャエル・ラウレンツも歌と演技のあまりのうまさに舌を巻くほど。代官のトーマス・ヨハネス・マイヤーもさすがの歌唱。マルク・アルブレヒトの指揮にもまったく不満はない。
演出はクリストフ・ロイ。舞台を現代にとっているが、そこで道化や王が登場するのは、やはり違和感が残る。男たちはみんな黒っぽいスーツを着ているが、そうすると道化や王や代官の役割が曖昧になるし、エリスとエルスの位置づけもよくわからない。あえてスーツ姿にしたのだろうが、めったに上演されないオペラくらい台本通りに上演してほしいものだ。
グノー 「ファウスト」 2015年6月 トリノ、レッジョ劇場(
かなり前の録画だが、初めて存在に気づいてソフトを入手した。悪くはないのだが、私はあまり気に入らなかった。
ファウストのチャールズ・カストロノーヴォ。きれいな声で容姿もいいのだが、声がわざとらしく、きわめて個人的な感想かもしれないが、厚化粧した声に聞こえる。マルグリートのイリーナ・ルングも清純な声で容姿もきれいでこの役にふさわしいのだが、私には平板に聞こえる。声に余裕がなく、やっと歌っている感じがしてしまう。メフィストフェレスのイルダール・アブドラザコフは声の余裕はあるのだが、フランス語と言えないような発音で歌いまくる。フランス人はまったく聞き取れないのではないか。シエベルのケテワン・ケモクリーゼには好感を抱いた。合唱についても縦の線があっていなくて、これまた発音が不明瞭。雑な感じを抱いた。
ジャナンドレア・ノセダの指揮については、勢いがあっていいのだが、全体が雑な感じなので、どうもオーケストラにもあまり惹かれなかった。
ステファノ・ポーダの演出は穏当だと思った。時間の円環性を象徴するのか、鉄製に見える大きなリングがずっと舞台上に置かれている。その前でファウストの物語が展開され、最後にはマルグリットの救済が暗示される。ちょっとありふれているといえるかもしれないが、合唱団の仕草とともに色彩的な舞台に仕上がっていた。ただ、仕草に力を入れたために、肝心の合唱の歌がおろそかになったんだろうなとは思った。ともあれ、異論があるかもしれないが、私はあまり完成度の高くない上演だと思った。
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