清水・郷古・向山のブランチコンサート 高貴なメンデルスゾーン!
2023年10月25日、東京芸術劇場コンサートホールで芸劇ブランチコンサート第44回を聴いた。出演は、企画者の清水和音のほか、今回初登場のヴァイオリンの郷古廉、そしてチェロの向山佳絵子。
曲目は、初めに、郷古と清水によるブロッホ作曲の「バール・シェム」。バール・シェムとはハシディズムというユダヤ教運動の創始者の名前だという。「懺悔」「即興」「歓喜」の3つの部分から成る。柴田克彦氏のプログラム・ノートにもある通り、鬱屈した雰囲気の曲。抑圧されてきた民族の怨念が詰まっているように感じるのは気のせいか。しかし、郷古のヴァイオリンの音があまりに美しく、伸びやかなので、しみじみとした雰囲気が広がって、鬱屈した部分が緩和されて、とても良かった。
次に、清水のピアノと向山佳絵子のチェロにより、サン=サーンスの「白鳥」とメンデルスゾーンの「無言歌op109」。屈託のないしなやかな音で自然に美しく響かせる。これもとても良かった。
最後に三人でメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番。3人の演奏家の持ち味がダイレクトに出るのだろう。とても高貴で明るい雰囲気だった。実は初めのうちは少し不満を抱いた。ニ短調のこの曲が、妙に明るい。もっと切迫した昏い感じでいいのではないかと思った。だが、メンデルスゾーンその人も、ユダヤ人としての鬱積を持ちながらも、育ちの良さとでもいうか伸びやかな高貴さが表に出て、絶妙のバランスの曲を作っている。そう考えると、まさにこの演奏は、悲しみはひとまずしまっておいて、ロマンティックな雰囲気が表に出てくるメンデルスゾーンにふさわしいと思った。郷古ののびのびとした美音、それを支えるチェロの甘美な音、そして目まぐるしく動き回って彩をつけるピアノの音、それらがうまく重なって心地よい世界を作っている。
郷古人気なのか、観客の、たぶん80パーセント以上が女性だった(と言っても、午前11時からのコンサートなので、高齢の女性がほとんど)。
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