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新国立「シモン・ボッカネグラ」 良かったが、感動にまでは至らなかった

 2023年11月21日、新国立劇場でヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」をみた。

 指揮は大野和士、東京フィルハーモニー交響楽団、演出はピエール・オーディ。フィンランド国立歌劇場、テアトロ・レアルとの共同制作。

 今回が3回目の公演だと思うが、まだオーケストラが歌手とぴったりと合っていない感じがした。幕が上がってすぐのオーケストラは精緻でしなやかで実に素晴らしかったので、期待したのだが、第一幕のシモンとアメーリアの二重唱の部分など、オケがふらふら。いつもだと1、2回目はぎくしゃくしていても、3回目ころからはぴたりとしてくるのだが、今回はてこずっているのだろうか。その後も何度かそのような部分があった。

 歌手陣はかなりレベルが高い。シモン・ボッカネグラのロベルト・フロンターリはさすがの歌唱。第2幕以降、ぐんぐんよくなって張りのある美声で歌った。私は実演でも映像でもこの人の歌はかなり聴いているが、とても安定している。フィエスコのリッカルド・ザネッラートも素晴らしかった。二人の二重唱は聴きごたえがあった。パオロのシモーネ・アルベルギーニは、悪役にしては端正でしっかりした歌だったが、それは演出にもよるのだろう。

 アメーリアのイリーナ・ルングはやや非力。力をセーブしていたのか、前半は特に声が出ていなかった。アドルノのルチアーノ・ガンチは素晴らしい美声で声量豊かなのだが、音程が怪しくなる。とはいえ、世界に名のしれた歌手たちで、これくらい歌ってくれればまったくもって不満はない。

 演出については、意外とオーソドックスだったと思う。全体的に具象性のない、抽象化された舞台で、対立する人物が現れる時、噴火する火山がひっくり返ったような形のものが何度か上から降りてきた。なんだか、葛藤を示しているだけのように思えて、陳腐な感じがしたのだが、どういう意味があったのだろう。また、パオロは現代のスーツとネクタイ姿で登場、最後の場面ではアドルノも同じような現代の服装だったが、その意味もよくわからなかった。そうしたことを除けば、特に新たな解釈があるようには思えなかった。

 全体として、とても高レベルの上演だったと思うが、期待したほどの感動は得られなかった。

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