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府中の森芸術劇場で西本智実指揮のモーツァルト「レクイエム」を聴いた

 20231216日、府中の森芸術劇場どりーむホールで西本智実指揮、イルミナートフィルハーモニーオーケストラによるモーツァルトのレクイエムを聴いた。「うたうまち府中プロジェクト ウィーンフェスティバル」の一環ということらしい。

 知人に誘われて出かけたのだったが、実は、合唱が「うたうまち府中合唱団」というアマチュアなので、あまり期待していなかった。が、とても良かった。良い演奏だった。

 合唱団はおそらく300人を超していると思う。かなり高齢の方もおられて、メンバーの何人かの足元がふらつく場面もあった、第一ヴァイオリン6名の小規模オーケストラに300人ほどの大合唱なので、やはりバランスはよくない。木管楽器の音などかき消されて聴こえてこない。ただ、合唱団はかなりの迫力だった。もちろん、プロの一線の合唱団に比べるとシャープさに欠けるし、音程も完璧ではない気がするが、アマチュア合唱団としては驚くべき精度だと思う。きれいな声が聞こえ、音程もかなりしっかりしている。この団体のレベルの高さ、市民の熱意を強く感じた。

 もちろん西本さんの名前はたぶん20年以上前から知っていたが、実演を聴くのは初めてだった。もっとスタンドプレーの指揮をする人だとばかり思っていたら、合唱団に無理のないテンポでわかりやすい指揮をしてしっかりと全体をまとめている印象を受けた。しかもそうしながらモーツァルトの音楽を進めていく。見事な手腕だと思う。ただ、やはりあまりの大所帯の合唱団で、しかも反応がシャープでないのせいで、独自の解釈は示せていなかったように思うが、それは致し方ないだろう。ともあれ、舞台上のすべての人が現在持っている力を存分に発揮できるように見事に工夫した指揮だったとはいえるだろう。

 独唱陣が素晴らしかった。とりわけソプラノの髙橋美咲は美しい澄んだ声が素晴らしい。また、テノールの松原陸の自然な声でありながらも音程の良い張りのある美声にも感嘆した。アルトの奥野恵子、バスの村松恒矢も安定していた。

 観客の多くが、合唱団として歌っている方の関係者のようで、終演後、合唱団が舞台からはけていくとき、観客席から舞台の知人を見つけて手を振る人が多かった。美しい光景だと思う。このような日常的なコンサートが行われ、ときどき日本有数の団体、世界的な団体が来る・・・それが理想的な音楽環境だと思う。私は府中市民ではないが、府中市がうらやましくなった。

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