春風亭昇吉独演会 「芝浜」に引き込まれた
2023年12月6日、渋谷区総合文化センター大和田・伝承ホールで春風亭庄吉の独演会を聴いた。とてもおもしろかった。いや、それ以上に見事な芸だと思った。
昇吉さんのYOUTUBEで拙著を紹介していただいて以来、師匠の噺を聴きたいと思ってきた。師匠に対して失礼を承知で言わせてもらうと、ぐんぐんと力をつけているのが素人にもよくわかる。私は見たことがないのだが、今や昇吉さんはテレビ番組「プレバト」で大人気とのこと。今日のお客の中にも、落語にはほとんどなじみがなくテレビで昇吉さんのファンになったという方がかなりいそうな気がした。
春風亭昇りんさんの前座(「前座」という言葉を使っていいのかちょっと不安だが)もとてもおもしろかったが、やはり昇吉さんは一味違う。3つの演目。ひどい宿に泊まる噺(聴いたことはあるような気がするが、タイトルは知らない)と新作と「芝浜」。席を自分で選択したわけではなかったが、最前列の中心に近い席だった。
初めの二つの演目では、明るく楽しく、軽いノリで話した。スピード感、明るさ、実に見事。ところが、後半の「芝浜」になると、同じ人と思えないほど雰囲気が異なる。着物の色も変えて、舞台に登場したときから人情噺の世界を作り出す。言い換えれば、滑稽話も人情噺も実に達者ということを示してくれている。そのために、このような三演目を選んだのだろう。
やはり、私は「芝浜」がおもしろかった。人物造形、情景描写も見事。間の取り方、視線などもさすがとしか言いようがない。顔の表情、視線の置き方、細かい息遣いまで計算されつくしているのがよくわかる。私は特に目の表情に圧倒された。目の表情で人物を使い分ける。ぐいぐいと引き込まれた。
昇吉さんの人情噺はとくに素晴らしい。9月に池袋演芸場で「お初徳兵衛浮名桟橋」を聴いたが、それもしっとりとして見事だった。もっとこの人の人情噺を聴きたいと思った。
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