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ギルバート&都響の第九  聴き慣れた第九だった!

 20231226日、サントリーホールで都響スペシャル「第九」を聴いた。指揮はアラン・ギルバート。

 とても良い演奏だった。都響らしい精緻なアンサンブルで、美しい響き。ギルバートの指揮で力感にあふれ、躍動感があった。ギルバートは、特にヴァイオリンの音色や奏法に変化をつけることで音楽を進めているのを感じた。ある意味でとても完璧な演奏とでも言いうか。まとまりがよく、盛り上がるべきところで盛り上がり、緻密な音楽が鳴り響く。新国立劇場合唱団も素晴らしい。

 ただ、私はあまりに予想通りに音楽が進んでいくのに、ちょっと不満を抱いた。

 私はなんとなく日本人の指揮する第九には共通性があるように思う。日本人の好む第九の表現があるのかもしれない。ギルバートの指揮する演奏を聴いて、これまで聴いてきた日本人指揮者と同質のものを感じた。ギルバートは日本人の血が混じっているわけだが、もしかしたらその影響があるのかもしれない。なんとなく、これまで何度となく聴いてきた第九のとても見事な再現版だという気がしてしまった。

 歌手陣は充実していた。バスのモリス・ロビンソンは驚異的な音量。ものすごい声と言っていいだろう。テノールのミカエル・ヴェイニウスも張りがあってとてもいい。ソプラノのクリスティーナ・ニルソン、メゾソプラノのリナート・シャハム、いずれも立派な声。ただ、四人で歌う時など、それぞれがばらばらに歌っているのを感じる。まあ必ずしもまとまりがよい必要もないのだが、それにしても四人が勝手に個性を主張している。そんなわけで、そのほかの部分が勢いがあり、まとまっているのに独唱者だけはばらばらといった印象を受けた。

 もちろん悪くはない。が、もっと個性的な第九を聴きたかった。

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コメント

中学生のころ初めてLPレコードで「第九」を聴いたときの衝撃が忘れられません。とくに第1楽章は、暗い中で何か得体のしれないものが渦巻いているような印象でした。そんな感覚は実演では受けたことがなく、あれは実演を知らない子供だった私が、LPレコードから勝手に妄想したことだったのかと思います。

投稿: Eno | 2023年12月27日 (水) 08時54分

Eno 様
コメント、ありがとうございます。
ブログ、しばしば拝見しています。とりわけ、新国立の「シモン・ボッカネグラ」は興味深く読ませていただきました。
第九については、私は、小学生のころに、カラヤン&フィルハーモニア管の廉価盤を感動して聴いていたのですが、中学生になってフルトヴェングラーの例のバイロイト盤を購入。あの冒頭部分に心を奪われ、いっぺんにフルトヴェングラー好きになったのでした。今も少なくとも冒頭についてはフルトヴェングラー以上の演奏はないと思っています。
レコードで大感動していたのに、実演ではそれほどの感動を覚えない・・・と私が常々感じているのは、ブラームスのヴァイオリン協奏曲です。

投稿: 樋口裕一 | 2023年12月28日 (木) 09時05分

何度もコメントして、すみません。
LPレコードでは感動したのに、実演ではなぜか感動したことがない……という曲では、私はブラームスのピアノ協奏曲第2番が筆頭です。
リヒター=ハーザーのピアノ、カラヤンの指揮(オーケストラはベルリン・フィルだったと思います)のLPが私の宝物でした。その後、バックハウスのピアノ、ベーム指揮ウィーン・フィルのLPが出て、上には上があるものだと思いました。
あれほど好きな曲なのに(今でも好きです!)、実演ではなぜか感動した覚えがありません。

投稿: Eno | 2023年12月29日 (金) 08時57分

Eno 様
コメント、ありがとうございます。
私もブラームスのピアノ協奏曲第2番、大好きな曲なのですが、たしかに実演ではあまり感動したことがありません。感動で震えたのは、2006年のアバド、ポリーニ、ルツェルン祝祭管だけのような気がします。その後も何度か実演を聴いていますが、それほどの感動を味わったことがありません。

投稿: 樋口裕一 | 2023年12月30日 (土) 15時51分

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