新国立劇場「エフゲニー・オネーギン」 名演だった!
2024年2月3日、新国立劇場で「エフゲニー・オネーギン」をみた。素晴らしかった。新国立劇場の歴史の中でもベストの部類に属す名演だと思った。
まず指揮のヴァレンティン・ウリューピンがとてもよかった。東京交響楽団から繊細でチャイコフスキーらしい憂いのあるしっかりした音を引き出していた。音楽がドラマティックで溌剌としているために、ちょっと若々しすぎる気がしないでもないが、考えてみると、これは間違いなく若者の恋と悲劇の物語なのだから、これでいいだろう。私自身の好みとしては、とりわけ第一幕はけだるく憂鬱な雰囲気であってほしいのだが、今回の上演では、悲劇の前触れのような含みのある音。なるほどこんな第一幕があってもいいと思った。その後も盛り上がりもとても良かった。最後のオネーギンの絶望もしっかりと伝わった。オーケストラのコントロールも見事。東響も見事な音! 木管楽器にしびれた。
歌手陣もみんなが揃っていた。オネーギンのユーリ・ユルチュクは余裕のある声で世をすねた陰のある役をうまく歌っていた。最後の渇望はみごとだった。タチヤーナのエカテリーナ・シウリーナも芯のある澄んだ声で声量も豊か。手紙の場面は素晴らしかった。チャーミングな容姿なのだが、なんとなく第三幕で高貴な貴婦人に見えないのが残念だった(もしかしたら赤のドレスが似合わないのかもしれない)が、声に関しては十分に貴婦人だった。レンスキーのヴィクトル・アンティペンコもこの役にふさわしい抒情的なテノールで決闘の場面はしみじみとして見事。オリガのアンナ・ゴリャチョーワも、ちょっと男っぽくておきゃんなこの役をうまく歌っていた。アルトでおきゃんな役を歌うのは難しいと思うのだが、初めて納得してこの役をみた。グレーミン公爵のアレクサンドル・ツィムバリュクは深々とした余裕のある美声でしみじみと老年の恋を歌って素晴らしかった。
ラーリナの郷家暁子、乳母の橋爪ゆかも外国人勢にまったく引けを取らぬ歌唱と演技。トリケの升島唯博は演出のせいかもしれないが、過剰な演技だと思った。
冨平恭平の合唱指揮による新国立劇場合唱団もとてもよかった。ただ、最初の合唱(合奏団は舞台には現れなかった)でテノールのソロの音程が少し不安定だったのが気になった。音楽面で気になったのは、それだけで、ほかは満足だった。
演出はきわめてオーソドックス。新しい解釈はほぼないと思う。ただ、合唱団が音楽に合わせて顔を大きく動かすなどの大きな動きをして不穏な雰囲気を出していた。また、決闘の場面では、オネーギンは的を外そうとしたのにたまたま銃弾が当たってしまったという設定にしていた。また、オネーギンの側の介添え人は事情がわからないまま連れてこられた酔っ払いであって、決闘と気づいてあわててやめさせようとして、レンスキーの死に動揺するという演出だった。オネーギンの心情を示すのにうまい演出だと思った。
全体的にとても満足。大いに感動した。私はけっしてチャイコフスキー好きではないのだが、このオペラは中学生のころから(つまり、ほぼ60年前から!)大好き。満足だった。
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