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東京二期会「タンホイザー」 堅実な指揮と歌手陣の充実に満足

 2024年2月28日、東京文化会館で東京二期会公演「タンホイザー」をみた。

 2021年にアクセル・コーバーの指揮でこのプロダクション(フランス国立ラン劇場との提携)の公演が予定されていたが、コーバーはコロナ禍の中で来日できず、たまたま日本滞在中だったヴァイグレが指揮して素晴らしい演奏をしたのだった。そして今回、予定されていたコーバーが来日。

 コーバーの指揮はきわめてオーソドックス。慌てず焦らずじっくりと丁寧に音楽を作っていく。少しも煽ったりもせず、地味に確実に。だから、序曲やヴェヌスベルクのバレーの部分は少々おとなしめ。しかし、徐々に盛り上げていく。読響もそれにこたえて、初めは抑え気味ながら、だんだんとみごとに精妙な音を出し、切れの良いドラマティックな音を増やして、しっかりとした構築性のある音楽を作り出していた。歌とタイミングがかすかにずれる場面もかなりあったが、初日だから仕方がないだろう。第三幕ではドラマティックで魂をゆすぶるような音楽になっていった。最後には私は大いに感動した。素晴らしい指揮者だと思う。ただ、欲を言えばもっともっと陶酔的であってほしかったのだが、それはないものねだりだろう。

 歌手陣も充実していた。やはり唯一の海外から参加のタンホイザーを歌うサイモン・オニールが素晴らしい。ちょっと独特の声。確かジョン・ヴィッカーズがこんな声だったような気がするが、確かめたわけではない。最後まで強靭な声で見事にタンホイザーの苦悩を歌った。ヴォルフラムの大沼徹もまったく引けを取らない歌唱と演技。体格的にもオニールよりも長身で、しかもスタイルがよいのが日本人としてはうれしい。「夕星の歌」も余裕をもってしなやかに歌って見事だった。エリーザベトの渡邊仁美もとてもよかった。豊かな声量で声のコントロールも見事。ヴェヌスの林正子も、清純な声ながらうまくこの役を歌っていた。ヘルマンの加藤宏隆も素晴らしいバスの声。この役にふさわしい。ひと昔前の日本人のワーグナー公演では考えられなかったほどの高レベルで、みんなが世界に通用するといって間違いないと思う。

 そのほか、牧童の朝倉春菜も、この難しい歌をしっかりした音程で歌ってとてもチャーミングだった。高野二郎、近藤圭、児玉和弘、清水宏樹も見事な歌唱。二期会合唱団もさすがの歌唱。まったく穴のない演奏だった。

 キース・ウォーナーの演出については、よくわからないところが多かった。どうやらタンホイザーとヴェヌスの間に子どもがいるという設定のようだが、それにどのような意味があるのかわからなかった。第三幕は舞台上に紙が散らばっており、ヴォルフラムはその紙を読みながら「夕星の歌」を歌っていた。これはヴォルフラム自身の気持ちを歌っているのではなく、誰かの詩を少し改めて歌っているということなのだろうか? 意味不明としか言いようがない。もちろん、私の理解不足なのかもしれないが。第一幕から最後まで舞台中央に円筒形の梯子のようなものがぶら下がっており、最後、タンホイザーはそれを上って救いの道に進む。ちょっと安易な感じがしないでもない。エリーザベトに恋して揺れ動くヴォルフラムにかなり焦点を当てた演出でもあった。

 ともあれ、日本人歌手の充実ぶりを確認し、コーバーの堅実な指揮が聴けて私としてはとても満足。だが、それにしても客が少なかった。三分の一も入っていなかったのではないか。とてもいい上演だったのに、あまりにもったいない!

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