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おとなしいブルックナーのミサ曲第3番と、男性的ではないブラームスの弦楽四重奏曲

 2024413日、東京春音楽祭の二つのコンサートに出かけた。まずは、14時から、東京文化会館大ホールで、ワーグナーの「ジークフリート牧歌」とブルックナーのミサ曲第3番。指揮はローター・ケーニヒス、管弦楽は東京都交響楽団。

「ジークフリート牧歌」はしなやかで、まさに牧歌的な良い演奏だった。牧歌的とはいえ、時にぐいぐいと強くて深い音になる。ただ、私はワーグナー好きだが、この曲は初めて聴いた50数年前から退屈に思ってしまう。今日も少々退屈だった。

 ブルックナーのミサ曲第3番は、ハンナ=エリーザベト・ミュラー(ソプラノ)、オッカ・フォン・デア・ダメラウ(メゾ・ソプラノ)、ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)、アイン・アンガー(バス)、合唱は東京オペラシンガーズによる演奏。演奏はとてもよかった。歌手陣は全員がすべて素晴らしい。私は特にミュラーの美声に酔った。合唱もよかった。指揮もしっかりとツボを押さえていた。都響もこのオーケストラらしい深みのある響き。ただ、もう少しブルックナーらしい信仰の爆発のようなものがほしいと思った。私は、おそらく30年ぶりくらいにこの曲を聴いたので実は記憶が定かでないのだが、もっと爆発的なところのある曲だったような気がする。なんだかおとなしいなあ…と思って聴いたのだった。

 

 18時からは東京文化会館小ホールでブラームスの弦楽四重奏曲全曲演奏。出演は周防亮介、小川響子(ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)、向山佳絵子(チェロ)。

 第1番は周防が第一ヴァイオリンを務めての演奏。正直言って、まとまりの良くない演奏だった。めいめいが勝手に演奏している感じで、一緒に一つの音楽を作り上げている様子がない。誰がリードしているのかわからない。周防のヴァイオリンの音色はとてもきれいなのだが、ほかの奏者とかみ合わない。ちょっと不満だった。

 第2番は、第一ヴァイオリンが小川響子に交代しての演奏。小川は体を大きく動かして感情豊かに演奏し、ほかの奏者をリードする。そのおかげで全体が一つの音楽に向かうようになった。第2番は曲もいいが、演奏もとてもよかった。川本も強い思いのヴィオラがとてもよかった。向山のチェロは安定感があり、ロマンティック。終楽章は特に勢いがあった。

 第3番は再び周防が第一ヴァイオリン。まとまりは、第2番よりも少し悪くなった気がするが、第1番よりはずっといい。周防の音色は素晴らしい。良い演奏だった。

 ただ、どうしても女性的なブラームスになってしまう。ブラームスらしい低音のどっしりした骨太の中に抑制されたロマンティックな感情が入りこむ音楽ではなく、美しい音の絡みあいによって盛り上がっていう音楽になる。それはそれでよいのだが、私としてはやはり男性的なブラームスのほうが好きだ。

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