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ベルリン・フィルメンバーによる室内楽 フックスのクラリネットに感嘆!

 2024420日、東京文化会館小ホールで東京春音楽祭「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」を聴いた。

 出演はアレクサンダー・イヴィッチ(ヴァイオリン)、オラフ・マニンガー(チェロ)、ヴェンツェル・フックス(クラリネット)、オハッド・ベン=アリ(ピアノ)。

 曲目は、初めにベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5番「幽霊」。あまり良い演奏とは思わなかった。一人一人がばらばらに演奏しており、音楽に表情がない。特にヴァイオリンとピアノがそっけない。とりわけ、このニックネームのもとになったとされる第2楽章があまりにそっけない。無理やり幽霊っぽく演奏する必要はないが、もう少し何らかの表情がほしい。不満を感じたまま終わった。

 次はクラリネットとチェロとピアノによるブルッフの「8つの小品」op.83より第1・2・5・7曲。フックスのクラリネットが入るだけでぐんと表情が豊かになった。とても雄弁なクラリネット。しみじみとした情感や強い思いが音に現れる。嘆きの歌になり、悲しみの歌になり、心からの喜びの歌になる。クラリネットという楽器は人間の喜怒哀楽を表すのにとても適した楽器だとつくづく思う。ただ、私はピアノの音がちょっと雑な感じがするのだが・・・。

 後半は、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第4番「街の歌」(クラリネット、チェロ、ピアノ版)。このヴァージョンを初めて聴いた。ヴァイオリンの代わりにクラリネットの表情豊かな音が出てくると、とても人間的になる感じがする。心の奥の思いがじかに伝わる。とても良い演奏だった。

 最後にヴァルター・ラブル作曲のクラリネットとヴァイオリン、チェロ、ピアノのための四重奏曲変ホ長調。この曲が作品1だという。この作曲家の名前を今回、初めて知った。シュトラウスよりも少し若い世代の作曲家で、ブラームスがこの曲を絶賛したという。なるほど、これは確かに名曲だと思った。シュトラウスよりもずっと古典的な作風で、美しいメロディにあふれ、とても論理的にできている。次にどのような展開になるのか、初めての曲なのに見当がつく。ただ、それがつまらないわけではなく、しっかりと美しいメロディにあふれ、あっと驚く飛躍もある。メロディの雰囲気としては、ブラームスよりもドヴォルザークに近いかもしれない。クラリネットが活躍し、躍動し、美しく展開する。とても楽しめた。

 私の今年の東京春音楽祭は、これでおしまい。今回もとても充実していた。来年が待ち遠しい。

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