新居由佳梨リサイタル 超絶技巧の中からメロディを浮かびださせる!
2024年5月12日、座間市立市民文化会館ハーモニーホール座間で、新居由佳梨ピアノ・リサイタル 2024 in ZAMAを聴いた。
新居さんとは10年以上前に知り合い、その後、何度かお仕事をご一緒させていただいた。多摩大学でクラシック音楽のコンサートを企画・運営するゼミを受け持っていた時期、何度か演奏をお願いしたことがある。今回、久しぶりに聴かせてもらった。
曲目は、前半にシューベルトの即興曲集第3番、クライスラー作曲、ラフマニノフ編曲の「愛の悲しみ」、ショパンのノクターン第2番、ショパンのバラード第1番、後半に ヨハン・シュトラウス2世のメロディをパラフレーズしたグリュンフェルト作曲の「ウィーンの夜会」、メンデルスゾーン作曲、リスト編曲の「歌の翼に」、プーランク作曲の「愛の小径」、リスト作曲の「愛の夢第3番」、グノーの原曲をリストがパラフレーズした「ファウスト・ワルツ」、アンコールにドビュッシーの「月の光」。新居さんご本人がMCを加えながらの演奏。演奏する音楽と同じように、感じがよくて優美で、しかし、しっかりと自己主張をする語り。
タイトルだけ見ると、親しみやすい「歌」が並んでいるが、その実、リストだったり、グリュンフェルトだったりがパラフレーズしたり、編曲したりした超絶技巧の曲ばかり。
しかも、新居さんの演奏は、超絶技巧をひけらかすのではなく、超絶技巧の中から美しいメロディを浮き立たせようとする。前半を聴く間は、「もっとメリハリをつけると、超絶技巧が引き立つのに・・・」と思いながら聴いていたが、聴き進むうち、このように奥ゆかしく音楽の美しさを表に出していくのが新居さんの音楽のあり方だと納得。時に優美に、時に激しく、幅広い表現によって音楽の持つ魅力を音にしていく。激情的な部分もあくまでも美しく、理性的な抑制が効いている。そして、何よりも一つ一つの音の粒立ちが美しい。
やはりこの人はフランスものが合っている。プーランクの、フランス語の抑揚をそのまま音楽にしたような、柔らかくてしなやかで、曲線的な表現が素晴らしい。また、グノーのメロディに基づくワルツも、感情をそのままたたきつけるのではなく、もっと洗練させて描く様子がとてもいい。
こんなことを言うのは大変おこがましいが、若いころから新居さんを知っているだけに、「ああ、とてもいいピアニストになったなあ」と思ったのだった。
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