モンテカルロ・フィル&山田&藤田 素晴らしかったが・・・
2024年5月27日、サントリーホールでモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演を聴いた。指揮は山田和樹。曲目は前半にベートーヴェンの「コリオラン」序曲と、ピアノの藤田真央が加わってベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番、後半にベルリオーズの幻想交響曲。藤田ファンのためだろう、観客の80パーセント以上、もしかしたら90パーセント近くが女性かもしれない。異様な雰囲気だった。
「コリオラン」序曲は久しぶりに聴いた。好きな曲だが、山田指揮のモンテカルロで聴くと、これまで聴いた演奏とまったく雰囲気が異なる。これまで聴いてきたこの曲は、ハ短調の、まさに運命と戦うような悲愴で痛々しい音楽だったが、今日はもっとしなやかでもっと膨らみがあり、豊かさがある。山田の語り口のうまさに脱帽。ここぞというところでオーケストラは全開になり、または勢いづき、または優しく歌う。その切り替えが実に巧み。モンテカルロ・フィルはとてもしなやかで美しい音。おしゃれな女性団員が何人もいて、見た目にもエレガントだが、演奏も色彩的でしなやかで豊かなニュアンスがある。木管がとても美しい。ただ、「この曲をこんなに上手に演奏していいのかな・・・」という、無理やりの不満を感じてしまう。昔、カラヤンに感じていたような不満だ。
藤田が加わっての協奏曲は、ちょっと印象が違った。藤田の音楽なのだろう、もっと率直でもっと躍動的。そしてピアノのタッチはこの上なく繊細で軽やか。ただし、この演奏も、私がこれまで聴いてきたハ短調の巨大な音楽ではない。もっと若々しく、生気にあふれ、生命に満ちている。藤田人気がよく理解できる。第一楽章のカデンツァは聞いたことのなかった。矢代昭雄の手になるとあとでX(旧ツイッター)で知った。なるほど! 新鮮で、確かに言われてみれば矢代昭雄のピアノ協奏曲と似た雰囲気のある音楽だった。
ソリスト・アンコールはブラームスの8つのピアノ小品より「カプリッチョ」とのこと。躍動感と、即興的な雰囲気にあふれたとてもいい演奏だった。
後半の「幻想」は、まさに山田の独壇場とでもいうべきもの。絵画的と言えるのではないか。風景が目に見えるよう。フレーズのニュアンスもわかりやすく、躍動感にあふれている。あの退屈な第三楽章も、けっこう楽しんで聴けた(私はいつも第3楽章では退屈と闘う。家で聴く時には、コーヒータイムになる)。第4楽章、第5楽章は大きなドラマ展開で見事。
ただ、無理やりにケチをつけるようだが、「こんなにうまくていいのかなあ」と思ってしまう。ベルリオーズの狂気のようなものが薄れてしまって、「幻想」が娯楽大作のようになってしまっている。これはもっとおどろおどろしくて、得体が知れなくて、狂気にあふれた音楽ではなかったのか。
アンコールはビゼーの「アルルの女」のファランドール。最後の、二つのテーマが合体するところはまさに壮観!
ちょっと疑問には感じたが、ともあれ、素晴らしいオーケストラと、あまりに巧みな指揮、そして躍動感のあるピアノに触れた満足。
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