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ウェールズ弦楽四重奏団ベートーヴェンチクルス 私の最も嫌いなタイプの演奏だった!

 2024612日、サントリーホールブルーローズで、サントリーホール・チェンバーミュージックガーデン、ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏の2日目を聴いた。演奏はウェールズ弦楽四重奏団。曲目は前半に第6番、後半に第13番大フーガ付き。

 以前、この団体の演奏を聴いてかなり退屈した記憶がある。だから今回も実はあまり期待してはいなかった。とはいえ、毎年、サントリーホール・チェンバーミュージックガーデンでは目覚ましいベートーヴェンの弦楽四重奏曲が演奏される。今回は全曲すべてを聴くのは見送ったが、もしかしたらと思って、2日目に出かけたのだった。が、やはり私の最も嫌いなタイプの演奏だった。

 最初から最後まで、ゆっくりと丁寧に、静かに平和に穏やかに演奏される。意図的にスケールを小さくした音楽。繊細に演奏しようとしているのだろう。どの楽章も、第13番の「カヴァティーナ」のような雰囲気。ピアニシモを強調し、ここぞというところではテンポをぐっと落として、かすかに聞こえるような繊細な音にする。フレーズとフレーズの対比なども強調せず、激しい表現と静かな表現の対比も示さない。きっと、「今のベートーヴェン演奏は大袈裟にしすぎている。もっと楽譜通りに演奏しよう」という主張なのだろうと思う。

 しかし、こうすると、一本調子になると私は思う。楽章と楽章の差もはっきりしない。ずっと静か。ベートーヴェンらしい荒々しさはまったくない。一本調子なので、何らかのメッセージも伝わらない。しかも、しばしばテンポを落とすので、形が崩れて構築性が弱まる。きわめて柔和でおとなしくて、情緒的な演奏。ベートーヴェンらしい激しい主張がなく、晩年に到達した境地も示されない。先日、クララ・シューマンの曲を聴いたが、今日もまるでクララ・シューマンを聴いたような気になった。第6番がそんな調子だったが、さすがに13番はもっとベートーヴェン的だろうと思ったのだったが、こちらも大差なかった。ただ、確かにカヴァティーナだけはとてもよかった。

 このような演奏をすることにどのような意味があるのだろうか。このメンバーはどのような主張をしようとしているのだろうか。疑問だらけだった。きっと、それなりの主張があり、それに賛同される方も多いのだとは思うが、私は退屈でたまらなかった。

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