葵トリオ スメタナのピアノ三重奏曲に圧倒された!
2024年6月6日、サントリーホール ブルーローズでサントリーホール・チェンバーミュージックガーデン、葵トリオによるコンサートを聴いた。曲目は、前半にベートーヴェンのピアノ三重奏曲第4番「街の歌」とフォーレのピアノ三重奏曲ニ短調、後半にスメタナのピアノ三重奏曲ト短調。世界の第一線のピアノ三重奏団だということをはっきりと示してくれる名演奏だった。
スケールが大きくくっきりとして勢いのある演奏。3人の個性がうまく釣り合っている。大きな身振りでロマンティックに演奏する小川響子のヴァイオリン、エネルギッシュで推進力のある秋元孝介のピアノ、しなやかで理性的な伊東裕のチェロ。その三つの楽器が相乗効果で最高の音楽を作り出す。
ベートーヴェンの「街の歌」では活気あふれる気分がすばらしかった。フォーレのトリオでは特に第2楽章で小川のヴァイオリンが大きくうねってひたひたとした感情の高まりを描き出した。圧巻はスメタナのトリオだった。
スメタナについては、「モルダウ」を聴いてつまらないと思い、「わが祖国」全曲を聴いて退屈だと思い、「売られた花嫁」の映像を見てまずまずと思ってきた。これまでスメタナの音楽を本気で聴いたことがなかった。先日のラ・フォル・ジュルネで初めてピアノ三重奏曲を聞いてびっくり。力感にあふれ、ロマンティックで劇的な名曲ではないか。グリーグのピアノ協奏曲のような雰囲気があって、ちょっと大袈裟すぎる気がしないでもないが、ともあれ引き込む力を持っている。これまでスメタナを軽視してきた自分を恥じた。
小川のヴァイオリンの牽引力がすさまじい。スケール大きく、ロマンティックに音楽に作っていく。それを秋元のピアノや伊東のチェロが支えて、まったく形が崩れることがない。強い情念にあふれ、しかし、決して感情におぼれずに音楽が構築されていく。素晴らしかった。
アンコールはマルチヌーのピアノ三重奏曲第1番の第2楽章とラヴェルのピアノ三重奏曲の第2楽章。マルチヌーについては、初めて聴く曲で戸惑うばかりだったが、ラヴェルのほうはまさに名演。
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