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英国ロイヤル・オペラ・ハウス来日公演「リゴレット」  デュピュイ、シエラ、カマレナ凄い!

 2024年6月25日、神奈川県民ホールで英国ロイヤル・オペラハウス来日公演「リゴレット」をみた。今日はマチネということで、ほかの日よりも3割引きほどの料金だった。円安の影響で外来演奏家のコンサートのチケットの高騰に苦しんでいるので、このような配慮はありがたい。

 指揮はアントニオ・パッパーノ、演出はオリヴァー・ミアーズ。この演出による上演は映像で見た記憶があるが、もちろん実演をみるのは初めて。さすがに素晴らしい。堪能した。

 パッパーノの実演を聴くのも、バイロイトでの「ローエングリン」以来かもしれない。切れの良い躍動感ある演奏。瞬発力があるので、ここぞというところでツボを外さない。オーケストラも精妙な音を出す。

 三人の主役の歌手がなんといっても圧倒的。とりわけタイトル・ロールのエティエンヌ・デュピュイには驚嘆した。リゴレット役としてはちょっと声が高貴すぎる気がするが、こんなリゴレットもあっていいだろう。娘を思う父親の心、そして復讐心、いずれもとても格調高く歌いあげた。ジルダのネイディーン・シエラもスケールの大きな声と演技。高音が清純で美しい。これまで何本かの映像を見て素晴らしいと思ってきたが、今回初めて実演を聴いて凄さを実感。マントヴァ公爵のハヴィエル・カマレナも、姿かたちは「アポロンのよう」には見えないが、声は文句なし。輝かしくて張りがあって、侯爵にふさわしい。今、この役を歌うとしたら、この三人しか考えられないほど。

 そのほか、マッダレーナのアンヌ・マリー・スタンリーも色気のある容姿と演技もさることながら、声もとてもよかった。四重唱はとりわけ素晴らしかった。それ以外の歌手陣もぞろっている。スパラフチーレのアレクサンデル・コペツィは、声の迫力ももちろん、まさに殺し屋の風格。合唱も見事。

 演出はかなり穏当だった。特に新しい解釈はないと思う。第一幕はティツィアーノのヴィーナス(だと思う)が後ろに大きく掲げられていた。その意図がよくわからなかった。

 しかし、復讐や呪いを表に出して生々しい人間ドラマを見せつけるというよりは、もっと抽象化して普遍的な人間の姿を見せてくれるような演奏と演出だった。ヴィーナスのそのような演出意図を示していたのかもしれない。

 

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