コバケン&ブダペスト響のチャイコフスキーに圧倒させられた!
2024年6月24日、武蔵野市民文化会館で、ハンガリー・ブダペスト交響楽団の演奏を聴いた。指揮は、かつてこのオーケストラを指揮してブダペスト指揮者コンクールに優勝して世界に知られるようになった小林研一郎。曲目は、優勝時のコンクール曲だったというロッシーニの「セヴィリアの理髪師」序曲と、亀井聖矢が加わってのリストのピアノ協奏曲第1番、後半にチャイコフスキーの交響曲第5番。マエストロがマイクを手にして、コンクールの出来事を話してから演奏に入った。
全体的にはオーケストラの精度はあまり高くないと思う。アンサンブルはちょっと雑な気がする。だが、弦がとてもきれいで、まとまるときにはしっかりとまとまる。味のある魅力的なオーケストラだと思った。
「セヴィリアの理髪師」はわりとふつうの演奏だったが、最後ではさすがの盛り上がり。まさに「コバケン節」。リストの協奏曲は、指揮とピアノの亀井との音楽性の違いを強く感じた。亀井はかなり理性的な演奏を好むピアニストのようだ。バンバンと情熱的に弾くというよりは緻密に組み立てて繊細に演奏しようとしている。ちょっと緊張気味なのか、前半不発に思えた。が、徐々に調子が出てきて、第3楽章は盛り上がった。ただ、私としてはもっと自在に演奏してもよいのではないかと思った。指揮が自由なのに対して、ピアノは窮屈な感じがしてしまった。
ソリストのアンコールは「ラ・カンパネッラ」。大向こうをうならせるというタイプではなく、知的に構築して繊細に音楽を展開して、最後に盛り上げようという演奏。説得力のある解釈だと思う。ただ、やはり、もう少し自在に弾いてもいいのではないかという感想を抱いた。まだ若いせいか、遠慮がちな気がした。
後半のチャイコフスキーについては、まさにコバケン健在を示すものだった。第三楽章までは、この指揮者にしては抑え気味。おや、さすがの炎のコバケンもちょっとお年を召してしまったかな? と思ったが、第四楽章の途中、ティンパニの連打を合図にしたように白熱した演奏になった。オーケストラのちょっとした乱れなど何のその、ものすごいエネルギーで押しまくり、観客を興奮に導く。私の好きなタイプの演奏ではないのだが、やはりこれほどの熱演を聴くと心の底から感動する。チャイコフスキーの世界が爆発し、陰鬱な世界から最後には解放され、華々しいファンファーレになる。その盛り上がりはすさじかった。
アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第5番。コバケンさんのトークが入り、初めにノーマルな演奏を少しだけ示してから、「私は日本人なので、日本人的に演奏したい。コバケン流のハンガリー舞曲」とのことで演奏が始まった。実は私は、ノーマルなほうがずっと好みだ。コバケン流の演奏は、情がこもりすぎて、まさに演歌的。が、これも、ここまで情熱的に演奏されると納得してしまう。コバケンの熱意というか、魂というのか、そのようなものに感動する。やはり小林研一郎は唯一無二の指揮者だと納得して聴いた。
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