2024年7月1日から5日にかけて、ブルネイ旅行に出かけた。これまで何度か利用した旅行代理店のツアーに参加。と言っても、参加者は私と30代の息子の二人だけの個人ツアー。初めは私一人が計画していたが、ちょうど時間の空いた息子が興味をもって同行することになったのだった。
ブルネイに行きたいと思ったのは、ただ単にまだ行ったことがなかったから。これまで、北朝鮮やブータンを含むアジア地域のほとんどの国に出かけた。このところ、サウジアラビア、パキスタン、バングラデシュなどのイスラム国になじんでいるので、「アジア地域にあって石油を算出する豊かな小さなイスラム教の王国ブルネイ」をみてもいいなという気になったのだった。
ガイドさん(日本国籍を持つ60代の女性だが、ご両親は中国系だという。日本語も完璧、ほかの様々な言語に通じて、しかも社会事情にも明るい!)に連れられて、市内を回った。少々疲れて「旅行記」を書く気力がないので、メモを記す。
・トゥトン地区文化保護ツア (ココナッツオイルの精製工場や伝統家屋、サゴヤシの加工工場などを見学)
伝統家屋はとても興味深かった。高床式で、ボートで近くの川に行き来する。まさにジャングルとの共存。
・カイポン・アイール(水上集落)
ブルネイ川に浮かぶ集落。コンクリートの杭を打ってその上に家を建てて1万3千人ほどが暮らしているという。涼しくて虫やネズミが来ないということでこのような生活を行っているらしい。ほとんどの人はボートで陸地に行き、そこから車で職場に通う。国王らが陸地に移住させようとしているらしいが、多くの人がそれを拒否しているという。壮観だった!
・旧モスク
第28代の国王のモスク。1958年完成。簡素だが、優美で美しい。
・新モスク
現国王が建設した壮大なモスク。
・ロイヤルレガリア/王室資料館
第二次大戦中、ブルネイ知事に任命された木村強と国王の友情物語をガイドさんに話してもらった。
・イスタナ・ヌルル・イマン/王宮
・ヤヤサンショッピングモール
地方都市のやや大きめのスーパーという感じ。
・マングローブリバーサファリ
ボートで水上集落を抜け、海の方に向かってマングローブの林をみた。野生のワニが見え、テングザルの遊ぶ姿が見えた。
・エンパイアホテル
南シナ海に沈む夕日をみた。美しかった。
・空港の規模は日本の地方の空港(私になじみの場所で言えば、大分空港)よりも少し大きいくらいで、清潔に保たれている。
・昼間の気温は30度前後。雨が降った後だったようで湿気が多い。
・申告すればアルコールの持ち込みも許されるとのことだったので、ウィスキーの小さな瓶を息子と二人で飲むために持ち込んだら、空港でかなり面倒な手続きをしなければならなかった。アルコール類を国内に入れたくないようだ。
・豊かな国と言われているが、人々の服装に関してはそれほど豊かには見えない。サウジアラビアは見るからに裕福そうな人が大勢いたが、こちらはみんな安っぽい服を着ているように見える。きわめて庶民的でのどか。
・車の運転マナーは日本よりはよいと思う。きちんと車間距離をあけて整然と運転する。私が横断歩道を渡ろうとすると、みんながとおしてくれる。車は、日本車が8割程度。金持ちの国と聞いていたが、ドイツの高級車などはめったに見かけない。ほとんどが日本の中級車。警笛はほどんど鳴らさない。静かな運転。
・道路などの社会インフラが整備されている。電柱も少ない。道路も清潔で、ほかの東南アジアの国のようにごみが散乱していない。物音もしない。無駄な音楽もかかっていない。どこもとても静か。
・緑が多い。まさにジャングルの中にできた都市。ホテル付近を歩いたら、ホテルから200メートルほどのところはジャングルのようになっており、川が流れており、そこには「ワニに注意」の看板があった!
・近代的な建物が並んでいる。すべてが清潔で、公園なども整備されている。サウジアラビアでも同じように感じたが、こちらはもっと自然で庶民的な感じ。建物もサウジアラビアのように巨大だったり、斬新なデザインだったりせず、きわめてオーソドックスな建物で、高さも5、6階建てが多い。
・イスラム国であり、住人の7割以上がイスラム教徒のはずなのに、それほどモスクが見えない。サウジアラビアやバングラデシュやパキスタンでは、少し歩くとモスクが目に入ったが、めったに見かけない。人口が少ないせいか。コーランの声が聞こえたのは数回だけだった。
・厳格なイスラム国家かと思ったら、そうでもない。ヒジャブをつけていないイスラム教徒らしい女性も多く見かける。家族に見えるのに、つけている女性とそうでない女性が混じっている。
・道路だけではない。お店もとても清潔。市場や屋台にも行ったが、そこも異様なほど清潔。ほかの東南アジアの国のようにハエがたかることもない。においが充満していることもない。残飯なども見当たらない。きっとゴミ掃除の仕事をしている人がいるのだろう。
・歩行者が見当たらない。道路がある。街並みがある。たくさんの車が日本の都市と同じように行きかっている。停車している車も多い。ところが、人が歩いていない! たまに人影をみるのは、車とお店の間を歩いている人だけ。道路に人がいない! 歩道も整備されていない。ガイドさんに尋ねてみると、どの家にも車が何台かあって、どこに行くにも車を使うとのこと。電車はなく、バスもめったにない。バスに乗っているのは限られた貧しい人だけとのこと。こんなに歩行者のいない国は初めて!
・テレビはチャンネルが2つで、一つが国営放送。もう一つが宗教放送。エンタメと言えるようなものは皆無とのこと。
・食事は、日本国籍のガイドさんが上手に選んでくれているためかもしれないが、とても日本人の口に合っていて、おいしい。辛すぎない。
・すべての施設には国王と皇后の写真が飾られている。それは義務とのこと。ただ、国民は心から国王夫妻を尊敬しているようだ。
・観光産業がまだ整備されていないようで、観光客にもあまり出会わない。モスクなどの観光地に行っても、数人の客しかいない。
・総人口からして当然かもしれないが、人が少ない。どこもガラガラ。お店にも、一部の人気レストランを除いて、客はほどんどいない。これで成り立つのだろうかと心配になる。
・ブルネイの人口は40数万人、国土は日本の三重県と同じくらい。
・この国に税金がないことはよく知られている。そして、教育費ゼロ、医療費ゼロ。一人当たりGDPは日本を超えている。ただし、少しそこに誤解があるようだ。
・この国で暮らしている人は、①黄色のカードを持つブルネイ国民(基本的にマレー系)でイスラム教徒、②赤色のカードを持つ永住権を持つ人々(華人など)でイスラム教徒とは限らない、③緑色のカードを持つ外国人労働者の3種類の分けられるという。明らかに一級、二級、三級に国民を分けていることになる。すべて税金は無料らしいが、つける仕事や福祉の内容、教育費、医療費については、カードの色によって異なる。したがって、国籍を持つ人は経済的な心配なしに生きていくことができる。
・ガイドさんによると、国籍を持つ人々は将来が安定しているので、仕事の意欲を持たないという。永住権を持つ人たちが努力してのし上がろうとし、経済を握っているという。東南アジアのいくつかの国の華僑や欧米のユダヤ人のような状況なのだろう。
・このような差別の中にいるので、第二級・第三級の市民が不満を持ちそうだが、とりあえず生活は十分に成り立っており、第一級の人たちも穏やかなので、争いは起こらず、ほとんどが満足して生きているという。
・イスラム教徒以外は豚を食べてよいのだが、この国ではほかの人々も豚を食べるのを遠慮しているという。だから、この国ではほとんど豚は食べられないようだ。多くの人が、イスラム教に合わせることにそれほど不満を持っていないという。
・治安はよく、まず物が盗まれることはないらしい。犯罪も少ないという。
・ただし、楽しみがあまりに少ないので、多くの人々が国境を越えてマレーシアに行って酒を買ったり、カラオケを楽しんだりしているらしい。
・外国人労働者は、様々な国からくるが、同じイスラム圏のバングラデシュ、インドネシア、マレーシアからくる人が多いという。その人たちが単純労働を行っている。
・絶対王政の国なので、国王についての批判は許されないのかと思ったら、かなり自由に批判をしているらしい。王室のスキャンダルなどもふつうに話題にされているようだ。
とても良い国だと思った。ちらっと、「これから先、こんなところに移住するのもいいな」とも思った。楽しみがないのはちょっと辛いが、日本から音楽や映画のソフトや機器を持ち込めば、寿命が尽きるまで十分楽しんで生きていけるだろうと思った。穏やかで暮らしやすそう。若いうちは、こんな国では我慢できないと思うだろうが、老後はいいかもしれない。
それにしても、石油や天然ガスによる経済的な裏付けがあるとはいえ、なぜ、このような王政が成り立っているのか、なぜ対立が起こらず平和でいられるのか謎だと思った。もう少し内情を知ってみないと納得できない。
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