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オペラ映像「トゥーランドット」「ルスランとリュドミラ」「皇帝の花嫁」

 暑い日が続いている。気温が35℃を超すと、外に出るのも命がけ。外出は暑い時間帯を避けて、できるだけ室内で過ごしている。春に新しい家に荷物を運び入れたわけだが、その際、NHKの番組を録画しただけでみた記憶のないオペラの映像が何本も出てきた。それを含めて、数本見たので、感想を書く。

 

プッチーニ 「トゥーランドット」 2023年12月7・8・13日、ウィーン国立歌劇場

 つい先ごろ放送されたもの。私はプッチーニ嫌いなので、「トゥーランドット」もあらすじさえもよく知らない。最後にこの曲の全曲を聴いたのは、1970年代か80年代のFM放送だと思う。が、今回、なんとアスミク・グリゴリアンがトゥーランドットを歌うというではないか。カラフをカウフマンが歌うというではないか。それがNHKで放送されるというではないか。プッチーニ嫌いだなどとは言っていられないと思って、録画してみた。

 が、やっぱり感動のしどころがわからない。「それがどうした?」と思ってしまう。が、それはともかくやはり歌手は凄い。グリゴリアンの声の伸び、自然で、癖がなくて、それでもまっすぐに強い声が伸びていく。演技も見事、容姿も見事。本当にこの人は別格だ! カウフマンはかなり癖の強い声だが、知的で伸びのある声と歌いまわしは素晴らしい。リューのクリスティーナ・ムヒタリヤンも二人の主役に引けを取らない。

 演出はクラウス・グート。中国色のまったくない、無機質で明るく、しかし不気味な舞台。ただ、もともとこのオペラに詳しくない私は、演出意図などまったく理解できない。指揮はマルコ・アルミリアート。これについても私には何も語る資格はない。

 正直言って、オペラについてはさっぱりわからないけれど、歌手がすごい!と思って、ただびっくりして最後まで見たのだった。

 

グリンカ 「ルスランとリュドミラ」 2011年11月、モスクワ、ボリショイ劇場

 長い間見ないまま放っておいた録画。録音は、昔、FM放送で聴いたことがあったような気がするが、映像は初めてみる。実演もみたことがない。序曲はよく知っているが、内容も今回初めて知った。

 オペラとしては、現在からみるとそれほどおもしろいものではない。音楽的にはおもしろいところはいくつもあるが、あまりに冗長なので、かなり退屈する。2時間ほどに縮めてほしい気になる(3時間20分ほどだった)。

 この上演は、全体的にはかなり高レベルだと思う。ルスランのミハイル・ペトレンコとリュドミラのアリビナ・シャギムラトワはとてもいい。ラトミールのユーリ・ミネンコはしっかりしたカウンターテナーの声、ファルラーフのアルマス・シュヴィルパも安定している。ただ、白魔術師フィンのチャールズ・ワークマンが私には音程が不安定に聞こえる。

 ウラディーミル・ユロフスキという指揮者、けっして嫌いではない(時々、感動する!)のだが、リズムにムラのようなものを感じて、ときどき落ち着かない気がする。今回もそのような印象を抱いた。

 ドミートリ・チェルニャコフの演出は、このオペラの退屈さを何とか弱めようと懸命になっているように思える。美女たちがおおぜい登場、全裸の女性も現れる。奇術をする集団も出てくる。そして、舞台のデザインはきわめて現代的。お洒落に処理をしている。それなりに面白く見たが、本来のこのオペラの味を伝えたかというとかなり疑問に思う。

 ともあれ、グリンカのオペラを知るにはよいソフトだった。

 

リムスキー=コルサコフ 「皇帝の花嫁」2018年11月、ボリショイ劇場

 NHK・BSで放送されたが、どうやらその時、みる時間がなかったようだ。私は近年、リムスキー=コルサコフのオペラ作曲家としての真価を知ったのだが、これが放映されたとき、まだ私はそれを知らなかったのかもしれない。上演のレベルも高いが、その前に、このオペラはまさに傑作! チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」と並ぶロシア・オペラの傑作だと思う。台本も実によくできている。むしろ、あまりに無駄なく論理的に展開していくのがこのオペラの限界なのかもしれないが、ともかく目を見張るような手際の良さ。音楽も美しく、健気なマルファ、悪漢グリャズノイ、復讐に取りつかれたリュバーシャにもそれぞれ感情移入ができる。最終幕はまさに大団円!

 グリャズノイのエリチン・アジゾフ、リュバーシャのアグンダ・クラエワは強い声で主役を食っている。「ローエングリン」のオルトルートとテルラムントを思い出すような歌と演技。マルファのオリガ・セリヴェルストワは歌が堅く、表現の幅が狭いが、清純なこの役をしっかりとこなしている。周囲に支えられた感はあるが、立派にヒロインを歌っている。マリファの恋人イワン・ルイコフを歌うイリヤ・セリヴァノフは20代に見える若者。若者らしくていいが、声が不安定。ボメーリイ のロマン・ムラヴィツキーはこの卑劣な小物のドイツ人を見事に造形している。演技力に脱帽。その他の歌手たちも実に見事に役を歌っている。ボリショイ合唱団もさすが。

 指揮はトゥガン・ソヒエフ。しっとりと、しかししっかりと抒情と悲劇を歌い上げる。無駄に盛り上げることなく、ひしひしと悲劇を伝える。ユリヤ・ペヴズネルの演出はきわめてオーソドックス。ちゃんと時代的な衣装で登場人物が現れ、台本通りの行動をとる。わかりやすくてとてもありがたい。

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