アントネッロの「リナルド」 バロック・オペラの楽しみを知った!
2024年8月17日、サイトリーホールで、第53回サントリー音楽賞受賞記念コンサート、ヘンデルのオペラ「リナルド」をみた。指揮、リコーダーは濱田芳通。バロック・オペラで近年、しばしば上演されているのと同じような、セミステージ形式。扮装をした人物がオーケストラの周囲で演技をしながら歌う。天皇陛下が臨席されておられた。
バロック・オペラに明るくない私は前もって予習していったのだが、版の事情などあるのだろうが、私がブルーレイディスクで見たものと、かなり音楽も異なり、ストーリーも違いがあった。もう少しバロック・オペラになじんだら、これらのことについて調べてみたい。
演奏に関しては、管弦楽のアントネッロとそれを指揮する濱田芳通は素晴らしいと思った。古楽器の魅力を完璧に伝えている。生き生きとした音楽。歌心もあり、躍動感もある。
歌手陣については、私はカウンターテナーの数人に特有の音程の不安定さを感じた。もちろん、リナルドの彌勒忠史はかなり安定しているが、それでも私は不自然さを感じる。エウスタツィオの新田壮人、魔法使いの眞弓創一はだんだん調子が上がってきたとはいえ、出だしはかなり不安定だった。ゴッフレードの中嶋俊晴は最後まで不安定で声が出ていないと思った。カウンターテナーは裏声を使うので、きっと音程がとりにくいのだろうが、近年の欧米のカウンターテナーのような安定がほしいと思う。
それに対して、裏声を使わない歌手たちはみんな素晴らしかった。アルミレーナの中川詩歩は美しい声で朗々と響く。アルミーダの中山美紀は迫力ある美声で、この人も高音が美しい。アルガンテの黒田祐貴は深みのあるバリトンで、演技も見事。セイレーン2の山際きみ佳は軽やかでチャーミングな声。
演出は中村敬一。漫画的な動きやギャグっぽいものを取り入れて、笑いの要素を強調している。オペラ本来の流れを壊すような気がして、私自身はあまり笑えなかったが、大きな笑いが起こっていた。このオペラの中にモーツァルトの「魔笛」のような雰囲気を見つけて笑いを加えるのもわからないでもない。一つの解決法だとは思う。私自身は少し疑問を抱くが、バロック・オペラに疎いので自信をもって語ることはできない。少なくとも、多くの人にこのオペラを心から楽しませるにはうまい手だとは思った。
とてもおもしろいストーリー、そして美しい音楽、素晴らしい歌手たちの声を堪能した。バロック・オペラ、なかなかおもしろい!
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コメント
私も笑えませんでした。第2幕の幕開きの日本語のギャグはわざとらしくて笑えなかったし、例の「私を泣かせてください」のアリアの後のギャグも子供っぽくて白けました。リナルドが随所で見せる幼児的な所作は言わずもがなです。ところがそういうギャグと所作が意外に受けているので驚きました。日本社会の現状を見るようでした。
投稿: Eno | 2024年8月18日 (日) 19時36分
Eno 様
コメント、ありがとうございます。おいでになっていたんですね。
ブログを読ませていただきました。
客席が受けていましたので、これも一つのやり方だろうとは思ったのですが、私は、安易すぎる笑いと、オペラのテーマとのズレを感じて、まったく笑うことができませんでした。
笑いを加えたのも、イスラム教徒が最後にキリスト教に改宗するという、かなり問題のある結末を緩和する手法だろうとは思うのですが、私はむしろ一層問題を大きくしているように感じたのでした。
が、音楽的には、全体的にはとても素晴らしく、十分に堪能できるものでした。ただ、私としましては、自分のバロック・オペラについても無知を痛感するばかりでした。
投稿: 樋口裕一 | 2024年8月19日 (月) 07時34分