プラッソンのラストコンサート フォーレのレクイエムに涙した
2024年8月13日、東京オペラシティ・コンサートホールで、東京二期会プレミアムコンサート2024ミシェル・プラッソン日本ラストコンサート Au revoir!を聴いた。指揮はミシェル・プラッソン、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団、合唱は二期会合唱団。オルガンは石丸由佳。曲目は前半にラヴェルの「マ・メール・ロワ」と「ダフニスとクロエ」第2組曲、後半にフォーレの「レクイエム」。90歳を超すプラッソンの日本最後の公演。素晴らしかった。
東フィルは見事にフランスの音を出した。精妙にして繊細。ラヴェル特有の、しなやかでありながらも芯の強い硬質の音を出す。プラッソンも完全にオーケストラを把握している。全体的にゆっくりと音楽を進めるが、弛緩しない。「マ・メール・ロワ」は音の絡みが鮮明。「ダフニスとクロエ」はラヴェルのオーケストレーションの腕前を堪能。合唱も効果的。管楽器の美しさにうっとりした。
前半も素晴らしかったが、やはり私の目当てはフォーレの「レクイエム」だ。最初のうちはオーケストラが少しまとまりに欠けるところはあったが、だんだんと静かで深い祈りの心が広がっていくのがわかった。小森輝彦のバリトン独唱も素晴らしい。力むことなく静かに祈りの心を歌う。「サンクトゥス」あたりから本当にこのレクイエム特有の、心の奥底で静かに祈りをささげるような音楽が聞こえてきた。大村博美のソプラノも、音程のたしかな美声で、清澄にして信仰にあふれている。最終曲「天国にて」は私の大好きな曲。涙なしには聴けない。なんという美しい音楽だろう。なんという天国的な音楽だろう。天上を魂が浮遊している! プラッソンはフォーレの祈りを見事に音にしていく。
プラッソン自身が客席に向かって英語で何事か語って(声が小さかったので、「ヴェリー・ショート」という言葉以外聞き取れなかった)、アンコールは「ラシーヌ賛歌」。昔、よく「レクイエム」とカップリングされていた小曲。これも素晴らしかった。
プラッソンにはCD初期の時代からなじんできた。実演もたびたび聴いた(いつだったかのブログに「プラッソンを初めて聴く」と書いたことがあるが、後で調べたら、それ以前にも聴いていた!)。ドイツ音楽好きの私にとってプラッソンは、最も好きな指揮者というわけではなかったが、フランス音楽を聴きたいときには、この指揮者を選ぶことが多かった。プラッソンの録音によって、私はグノーやマスネやドリーブのオペラを知った。最後の来日公演でフォーレの「レクイエム」を聴くことができて幸せだった。
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コメント
私もこの日行きました。荘厳な優しさというとおかしな表現ですが、そういう趣を感じたフォーレ。特に弦の練りこまれた深い歌心にすごく感銘を受けました。プラッソンは足の状態はあまり良くないようでしたが、奏でられた音楽は、老熟の深みと感性の若々しさを兼ね備えた、本当に素晴らしいもので、おっしゃられるように聴けて幸せな気持ちになりました。この演奏に携わったすべての方に深く感謝。
投稿: かきのたね | 2024年8月17日 (土) 21時33分
かきのたね 様
コメント、ありがとうございます。
「荘厳なやさしさ」、まさにその通りだと思います。
プラッソンの指揮をもう日本で聴けないのは残念ですが、この曲を聴けてほんとうに幸せだと思いました。
投稿: 樋口裕一 | 2024年8月19日 (月) 07時23分