松島理紗&中本優衣の「月に憑かれたピエロ」に震撼!
2024年9月21日、代官山教会で、松島理紗(ソプラノ)と中本優衣(ピアノ)によるリーダーアーベントを聴いた。曲目は、前半にベルクの初期の7つの歌と、昨年の日本音楽コンクール作曲部門で1位の前川泉の新曲「Herbst」、後半に「月につかれたピエロ」。 代官山協会には初めて足を運んだ。50人程度のこじんまりしたホール。
松島、中本、前川の三人はともにケルン音楽大学で学んでいるとのこと。私は桐朋音大時代の松島さんの歌を聴いて衝撃を受け、それ以来、機会があるごとに聴かせていただいている。以前から素晴らしい歌唱力だったが、さらに磨きがかかって本当に素晴らしい。
最初の音から、聴く者を虜にするような、音楽の魂の本質にぐいぐいと入り込んでいくような表現。声も完璧にコントロールされている。中本のピアノはそれに比べると、ずっと控えめでおとなしいが、粒立ちの美しい鮮明な音なので、松島の歌に決して負けていない。
この小さなホールで目の前で素晴らしい演奏をされると、魂が震える。ベルクの初期の歌曲はとても魅力的。レコードの時代、繰り返し聴いたが、そういえば、しばらくご無沙汰していた。こうして聴くと実にいい。ベルクの世紀末的な雰囲気とロマンティックな疼きが聴きとれる。前川の新曲は、歌詞が配布されたが、どこを歌っているのかまったくわからなかった! が、新鮮な音の響きに退屈しなかった。
やはり圧巻は「月に憑かれたピエロ」。松島が椅子に座って、いわば独り芝居。白石加代子の早稲田小劇場時代の物狂いの演技を思い出した。表面的な美しさをかなぐり捨て、狂気の中に潜む真実をえぐり出す。ものすごい迫力。シュプレヒシュティンメも完璧に自分のものにして、ホール全体を震撼させる。見事。ピアノが正気を保っているので、ギリギリのところで音楽が成り立っている。二人のバランスが絶妙だと思った。
久しぶりに新ウィーン楽派のコンサートに足を運んだが、小さなホールで聴くと、とてもいい。作曲から100年以上がたってもまさに新鮮。現代の人間の心の中をまざまざと聞かされる気がした。
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