« 日フィル&ウォンのブルックナー ことごとく私の美学に反するブル9だった! | トップページ | オペラ映像「ドン・ジョヴァンニ」「フィガロの結婚」「二人のフォスカリ」 »

東京二期会「コジ・ファン・トゥッテ」 ペリー演出に感嘆!

 2024年9月7日、東京オペラシティ、オペラパレスで東京二期会オペラ劇場、「コジ・ファン・トゥッテ」をみた。指揮はクリスティアン・アルミンク、演出・衣裳はロラン・ペリー。とてもおもしろかった。

 まずはやはりロラン・ペリーの演出に目を引かれる。どうやら「コジ・ファン・トゥッテ」のレコードの録音をしているという設定で始まる。機材から考えて、どうも1960年代か70年代の雰囲気。盛んにオペラのレコードが録音された時代だ。そこに歌手たちが集まって歌い出す。周囲には技師たちやその助手たちがいる。そして、音楽が進んでいくうちに幻想が高まり、人物が生きて動き出す。そのような仕掛けになっている。

 私が2014年にザルツブルクでみた「影のない女」が同じようにレコード録音の場面で始まったが、私にはその理由を理解できなかった。が、今回はとてもよく理解できる。

 プログラムに掲載されているインタビューでペリー自身が語る通り、このオペラはコメディア・デッラルテと近代劇の両方の面を持っている。それを現代によみがえらせようとすると、どうしても無理が出てくる。ヒロインたちがちゃちな変装に騙され、たった一日に心変わりすることに、現代人は納得しない。それをどう処理するかがこのオペラの演出のキモになる。それを解決するために、ペリーはいわば劇中劇という形をとった。こうすることによって、コメディア・デッラルテ風の笑劇と近代心理劇を重ね合わせることができる。そこにペリー特有の、登場人物たちのリズミカルでコミカルな動きが重なって、現代人の戯画化された不思議な舞台を作り出すことができる。うーん、ペリーはとんでもない天才だ!!

 ペリーの演出のためもあるだろうが、歌手陣の演技はみんなとても素晴らしい。ただ、私はペリー演出のオペラの映像をかなりみているが、それと比べると、やはり動きのキレが少し鈍い。これまでみたものは、いずれも人物の動きをみているだけでダンスのように美しかった。ヨーロッパで上演されたこのオペラの映像が発売されたら、ぜひ見てみたい。

 歌手陣は、世界的とは言わないが、かなりレベルが高い。フィオルディリージの種谷典子は美しくも芯の強い声。声域が広くて難しいアリアをかなり見事に歌った。ドラベッラの藤井麻美もドラマティックに歌ってとてもいい。この二人は声の質も体型も似ていて、演出にぴったり。声のアンサンブルも素晴らしかった。

 グリエルモの宮下嘉彦はしっかりした声で堅実に歌ってとてもよかった。フェランドの糸賀修平は少し癖のある声。一人で歌う分にはよいと思うが、ほかの歌手から少し浮いているのを感じた。デスピーナの九嶋香奈枝は全力疾走の元気な人物を作り出し、ドン・アルフォンソの河野鉄平は軽妙な曲者を作り出して見事。

 新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮したアルミンクについては、私は少し不満を抱いた。もちろん、しっかりと音をまとめてしなやかに演奏してくれたが、どうも推進力に欠ける。もう少しぐいぐいと音楽を引っ張ってもいいのではないか。

 ともあれ、ペリーの演出ときわめてレベルの高い歌手陣の歌と演技を見て、私はとても満足だった。

|

« 日フィル&ウォンのブルックナー ことごとく私の美学に反するブル9だった! | トップページ | オペラ映像「ドン・ジョヴァンニ」「フィガロの結婚」「二人のフォスカリ」 »

「音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 日フィル&ウォンのブルックナー ことごとく私の美学に反するブル9だった! | トップページ | オペラ映像「ドン・ジョヴァンニ」「フィガロの結婚」「二人のフォスカリ」 »