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原田慶太楼&日フィルのショスタコーヴィチ第5番に感動

 2024年9月14日、相模女子大学グリーンホールで日本フィルハーモニー交響楽団相模原定期演奏家を聴いた。指揮は原田慶太楼、曲目は、前半にヒグドン作曲のファンファーレ・リトミコと、吉本梨乃がソロに加わってのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番、後半にショスタコーヴィチの交響曲第5番。

 久しぶりのグリーンホール。相模女子大学には、その昔、非常勤講師として勤めていたので土地勘がある。大学のすぐ横にグリーンホールができた時からよく知っている。なつかしい。原田の評判は聞いているが、実演に接したことがなかったので、ショスタコーヴィチが演奏されるというので足を運んだ。

 とても良い演奏だった。ジェニファー・ヒグドンは現代アメリカの女流作曲家。この曲は日本初演とのこと。タイトル通り、リズミカルでエネルギッシュで鮮やかで華やかな曲。とても楽しかった。原田の指揮は実に鮮やか。見事に整理され、楽器が美しく響く。

 モーツァルトの協奏曲も、とてもしなやかでよい演奏だった。吉本のヴァイオリンは率直で溌剌として、まさにモーツァルト中期の曲にぴったり。原田の指揮する日フィルもとてもうまくフォローしている。ちょっとした緩急によって音楽を活気づけるところはさすが。ソリストのアンコールはパガニーニのカプリース第24曲。しっかりとしたテクニックと音楽性を聴かせてくれたが、もう少し超絶技巧をひけらかしてもよかったのではないか。パガニーニはもっと外連味がほしいと思った。

 後半のショスタコーヴィチは素晴らしかった。原田はまだ若いのに、まさに堂に入った指揮ぶり。楽器を手際よく整理して音を鮮明に響かせるのはもちろん、ある種の「活劇」のように、面白くドラマティックに聴かせてくれながらも、音楽の表情がこの作曲家らしく陰影があって一筋縄ではいかない深みがある。第2楽章の終わり方をゆっくりとして戯画化を印象付け、第3楽章はじっくりと心の奥底からの嘆きと希望を描く。そして、終楽章はある意味で、やけくその勝利のファンファーレ。なんだかよくわからないが、すごい。これぞショスタコーヴィチの醍醐味。

 私も大いに感動したが、私の周囲にいた、演奏前の話の様子から、どうやらオーケストラの演奏を聴くは初めてらしい少女や高齢女性もおおいに心を動かされた様子。この曲の持つ魅力でもあるだろうが、原田と日フィルの功績でもあるだろう。たいしたものだ!

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コメント

自分は前日の大宮で同じプロを聴きました。感想はほとんど同じです。

モーツァルトはソロが辻さんでしたが、この時は指揮台を撤去して、まるでオケに囲まれながら、ソリストと指揮者がダンスをしてるような音楽が、視覚的なそれもともなってとても粋で優雅に感じられました。

逆にショスタコーヴィチは真っすぐな演奏で、それこそベートーヴェンやチャイコフスキーの同じ第五交響曲を指揮するのと同じような姿勢を感じ、そのためとても爽快で聴き応えがある演奏に感じました。

11月にはドニゼッティの「連隊の娘」をやるのでこれも聴きものになりそうです。

投稿: かきのたね | 2024年9月17日 (火) 02時03分

かきのたね 様
コメント、ありがとうございます。
相模原でもモーツァルトは指揮台なしでの演奏でした。こちらは指揮者が横で妹をサポートしているような雰囲気がありました。
爽快でドラマティック。とてもいいですね。「連隊の娘」、私も楽しみにしています。

投稿: 樋口裕一 | 2024年9月18日 (水) 11時30分

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