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小山実稚恵&広上淳一&N響 しなやかで自然な流れのブラームスの協奏曲

 2024年10月5日、サントリーホールで、小山実稚恵 サントリーホール・シリーズ Concerto<以心伝心> 2024を聴いた。指揮は広上淳一、管弦楽はNHK交響楽団。曲目は前半にモーツァルトのピアノ協奏曲第27番、後半にブラームスのピアノ協奏曲第1番。

 前半のモーツァルトはオーケストラのあっと驚くほど軽やかな音で始まった。後半のブラームスとの違いを明確にするという意図もあったのかもしれない。力まず、柔和に、さわやかに。そこに粒立ちの美しいしなやかなピアノが入る。小山さんの好きな曲だとのこと。第2楽章がとても美しかった! 技巧を弄さず、飾りも取り去り、ただ美そのものが流れていくかのような演奏。素晴らしいのだが、実をいうと、私のような俗っぽい人間は、これだとちょっと退屈に感じてしまう。もう少し何とかしてくれるほうが嬉しいなあと思ったが、きっとそれは私の修行が足りないせいだろう。

 後半が始まる前、客席がざわめき始めたと思ったら、2階席に上皇ご夫妻が着席なさった。客席の多くの人が立ち上がって拍手。お元気なご様子だった。

 ブラームスの第1番の協奏曲はこれまで聴いた演奏では、力みを感じることが多かった。肩に力が入り、ブラームスが必死に大曲を書いている様子が伝わってくる。そのために、あちこちで音楽に軋みができ、壊れそうになる。そんな曲だ。ところが、今日の演奏はまったくそんなところがなかった。

 広上の指揮するN響の音は、しなやかで、音楽の流れがきわめて自然。第一楽章の大きく盛り上がるところも、スケールが大きく荘重ではあるが、けっして力んでいる感じはない。第2楽章はことのほか繊細でしなやか。きっと小山さんはこの楽章に思い入れがあるのだろう。ピアノの音に抒情的で深い思いがこもっている。ただ、それを没入して演奏するというよりは、少し突き放した感じで静かにやさしく演奏。素晴らしかった。第3楽章は大きく盛り上がったが、ここでも音楽が崩れない。見事な演奏だった。

 ピアノのアンコールはブラームスのワルツ15番。優美で美しく、懐かしいといってよいような深い思いがこもる。とても良いコンサートだった。

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