新国立劇場「夢遊病の女」 ムスキオとシラグーザの美声を堪能した
2024年10月6日、新国立劇場でベッリーニ作曲「夢遊病の女」をみた。CDやDVD、BDは何枚か持っているが、実演をみたのは初めて。
ベッリーニのオペラをみる(聴く)とき、まず私は「オーケストレーションには目をつむろう(耳をふさごう)」と腹を決める。が、やはりいざ聴き始めると気になって仕方がない。ベッリーニのオペラの「歌」については本当に素晴らしい。格調高く凛として気高い。が、あまりに薄いオーケストレーションがどうにもならない。本人も自覚していたようで、オーケストレーションの勉強を本格的にしようと思っている矢先に夭折してしまったという事情があったらしい。
歌手については、やはりアミーナのクラウディア・ムスキオとエルヴィーノのアントニーノ・シラグーザが別格。ムスキオはヴィブラートの少ない澄んだ声でこの作曲家にふさわしい気品ある歌を聴かせてくれる。第二幕の最後は本当に言葉をなくす美しさ。静まり返った会場にビンビンと美声が響く。シラグーザも、独特の輝かしい声で会場を沸かせる。
ただこの二人の二重唱については間延びして聞えた。特に第一幕ではそう感じた。マウリツィオ・ベニーニの指揮のせいなのか、二人のリハーサルの時間が取れなかったのか、それともそもそものオーケストレーションの薄さのせいなのか。ベニーニほどの指揮者が間延びするはずもないので、このオーケストレーションではそのように聞こえるのかもしれない。確かに、二重唱以外のところでも、ベニーニはこの薄くて工夫のないオーケストレーションをうまく鳴らすのに苦労している様子が見て取れる。
ロドルフォ伯爵の妻屋秀和、テレーザの谷口睦美、リーザの伊藤晴、アレッシオの近藤 圭はもちろん健闘しているが、やはり主役二人とはかなり格が違うのを感じざるを得ない。
演出はバルバラ・リュック。音楽が始まる前、10人のダンサーがアミーナの周囲を不気味に動きまわる。どうやらこれらのダンサーは「夢魔」といったところ。アミーナが夢遊病で彷徨するところなどでこのダンサーたちが動き回る。簡素な舞台ながら、わかりやすい舞台だと思った。
第1幕では、舞台全体に間延びしたところがあり、オーケストラと歌がぴたりと合わないところなどを感じたが、第2幕では緊迫感が出てきて、最後はとてもよかった。ともあれ、ベッリーニ特有の歌の魅力を味わうことができ、二人の主役の美声を堪能できた。
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